家事手伝い(無収入)な「子供部屋おばさん」の危険な末路

この「子供部屋おじさん・おばさん」はどれくらいの人数なのかといった調査は今のところない。ただ、前出の「実家暮らしをしている35~54歳の独身者:約446万人」という数字は、とりわけ都市圏では個人の経済状況の悪化と共に、実家を出たくとも出られないという層が増えているということの裏返しと言えるのではないか。

もちろん、このパラサイトシングル=「子供部屋おじさん/おばさん」の中には、「自分は親の介護をしている」「実家が通勤圏内にある」「生活費などを潤沢に親に渡している」、さらには「計画的な貯金あるいは将来の具体的な目標のため」といった事情があり、必ずしも「依存」とは呼べない層も多数含まれることを考慮に入れる必要がある。

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危惧されているのは「中高年になっても、親の経済力に頼っている人」たちである。つまり、収入がゼロかわずかにしか得ていない人々で、「子供部屋おじさん」より「子供部屋おばさん」に多いと思われる。女性は男性と比較すると低年収であることが多く、さらに“家事手伝い”という職業に就くことが許される社会背景があるからだ。彼女たちの実家が裕福であれば別だが、それでなければ親亡き後は生活保護となるリスクがあり、結果的に「社会保障財政を強く圧迫することになるのではないか」と警鐘を鳴らす人も多い。

70代の親と同居する43歳の就職氷河期世代の子供部屋おばさんの事例

筆者はパラサイトシングルと呼ばれる方たちの取材も多数行っているが、その声の中でも、多いのが「家賃問題」だ。

先述した「北区モデル」(=生活費の節約を重視したもの)では、家賃は5万5000円と算出されているが、この家賃を負担するだけの収入がない人がいる。

恵子さん(43歳・仮名)は都内近郊で70代の親と同居。小学生から、そのまま同じ子供部屋に住み続けている。いわゆる就職氷河期世代で大学を出たものの、希望の企業からは内定がもらえず、そのまま「家事手伝い」という“肩書”に移行したのだという。

現在、仕事は「単発バイトはたまにする」(恵子さん)ということだが、家事・食事全般は親に任せきり。スーパーに買い物に行く時に一緒に出掛けて、その手伝いをする程度だそうだ。本人は苦笑気味に「子供部屋おばさんって私のことですかね?」と言っている。

先日、筆者はこの母親から「誰か(伴侶として)良い人はいないか?」という相談を受けたが、本人は「現状が快適すぎるので、結婚する気がない」とにべもない。

「親もやがて介護状態になると思うんです。だから、親も本音では私が一緒にいてくれるほうが良いと思っているんですよ」と筆者に語った。

恵子さんが言うとおり、老年期に入り、わが身が介護状態になると、やはり子供がそばにいてくれると親としても安心な面があるだろうし、その選択には家族それぞれの事情があるだろう。

しかし、筆者はこの恵子さんのような主張をする「大人になっても子供部屋に住み続けている“無収入”な人」の親から相談を受ける度に、次の5点についての“家族会議”が必須だと痛感するのだ。