相続で困るのは負債があるケース。その場合は、「相続放棄」「限定承認」という方法で、マイナスの財産を引き継がないこともできる。「相続放棄」は、プラスの財産も受け取らない代わりに、負債も負わないというもの。「限定承認」は、プラスの財産の範囲内で負債を引き継ぐ方法だ。いずれも、被相続人が亡くなってから3カ月以内に家庭裁判所に申し立てる必要がある。

次に期限が来るのが所得税の「準確定申告」だ。通常、確定申告は翌年3月15日までに前年1年分を行うものだが、亡くなった場合は、死亡後4カ月以内に、その年の1月から死亡日までの所得について本人の代わりに残された相続人が所得税の準確定申告をする。「個人で事業をしていた」「不動産収入があった」「高額な医療費がかかった」といった場合、準確定申告の対象になる可能性が高い。納税義務がある場合は、それぞれの相続人が原則として法定相続分相当額を負担するが、還付があれば受け取ることも可能だ。

遺言書がない場合は、「誰が何を受け継ぐか」といった遺産分割の話し合いが必要になる。これを「遺産分割協議」と言い、残された家族(相続人)全員で行い、その結果をまとめた協議書に相続人全員が署名捺印する。その内容に沿って、不動産や預貯金、株式などの名義変更を行うが、相続税が発生する場合その相続により取得した分に応じて各相続人が、10カ月以内に納税を済ませることになる。

相続税にも延滞料金が発生する!

だが、遺産分割で揉めると、相続税の申告期限までに決着がつかないこともある。すべてのケースで相続税が発生するわけではないものの、期限内に申告ができなかった場合は、通常支払う相続税に加えて、ペナルティとして延滞税と無申告加算税が課せられる。

期限後の納税の延滞税は法定納期限の翌日から納付するまでの日数に応じて、年2.8%が加算される。また、相続税の申告をしないままにしておくと無申告加算税も取られることになる。税務調査前に気がついて申告すれば、無申告加算税は納税相続税の5%だが、調査後になると15%(または20%)が課せられる。さらに悪質なケースと判断されると、無申告加算税に代わって、40%の重加算税を支払わなければならない。

「市区町村に死亡届を出したり、住宅の名義変更がされたりすると、その情報は税務署に送られます。税務署は日頃から一定以上の所得がある人を把握しており、相続税申告が必要かどうかの『お尋ね』が来るので、納税を逃れることはできません」