トランプアレルギーからトランプエネルギーへの転換が必要
また、長期的な視点では、日本の農業・エネルギー政策の抜本的な見直しも避けては通れません。農業の生産性や食料自給率の向上を促す施策が不可欠であり、それと同時にエネルギー供給の多様化を推進させつつ市場の変動リスクを抑えていくことが求められます。
さらに、トランプ第2期政権の政策動向にも注目する必要があります。前政権時と同様に、化石燃料の増産を推進する方針が示されていることから、短期的にはエネルギー価格が安定する可能性がある一方で、環境規制の緩和による長期的な市場の不確実性も懸念されます。
特に、日本にとって重要なLNGの価格動向は、米国の政策変更によって大きく影響を受ける可能性があり、エネルギー調達の戦略的な見直しが求められるでしょう。
結局のところ、CPIの上昇が続く中で最も重要なのは、経済の構造改革を進め、国民の実質購買力を確保することです。トランプ政権に振り回されるのではなく、「トランプアレルギー」から「トランプエネルギー」へと視点を変えること。トランプ政権の政策が日本のエネルギー市場や貿易関係にどのような影響を及ぼすかを慎重に見極めつつ、短期的な価格変動に振り回されずに中長期的な視点で経済政策を見直す必要があるのではないでしょうか。

構成=池田純子
2008年に神戸大学経済学部(計量経済学専攻)を卒業。2016年に一橋大学大学院にてMBA in Financeを取得。一橋大学大学院博士後期課程在籍中。研究分野はコーポレートファイナンス。新卒後は、大和証券SMBC金融証券研究所(現:大和証券)でアナリストとして資本市場分析に携わる。債券トレーダーを経験したのち、2012年に独立。著書に『投資一年目のための経済と政治のニュースが面白いほどわかる本』(大和書房)などがある。