CPI上昇をつくるエネルギー価格の高騰
新年度が始まろうとする中、消費者物価指数(CPI)の上昇が続いています。
止まらない物価の上昇に苛立ちと不安を抱きながらの春を迎える人も多いのではないでしょうか。かく言う私がそのひとりです。スーパーに行けば、いつも買う食料品が以前よりも高くなっている、葉物野菜が同じ値段で量が減っている……などなどに愕然としてしまい、お米や旬の野菜を買うのをためらってしまうほどです。

こうした物価上昇の背景には、エネルギー価格の高騰があります。電気代やガス代が上がることで、食品の生産や輸送にかかるコストが増え、その結果として店頭価格も上がってしまうのです。今回はトランプ第2期政権の影響もふまえながら、この背景を明らかにしたいと思います。
2025年1月の消費者物価指数のデータによると、総合指数は2020年を100として111.2となり、前年同月比で4.0%の上昇となりました。生鮮食品を除いた同指数は109.8で3.2%の上昇、生鮮食品とエネルギーを除いた同指数は108.5で2.5%の上昇となっています(*1)。
農水省によると、2024年末はキャベツの価格が平年比3.4倍になったという報告もあり、食料品価格の上昇は昨年より継続している状況です。先述の通り、主な要因の一つが「エネルギー価格の変動」です。詳しく見ていきましょう。
*1 統計局ホームページ/消費者物価指数(CPI)全国(最新の月次結果の概要)
天然ガスの異常な値上がりによる影響
エネルギー価格は主に、「資源価格」と「為替」の2つの要因によって決まります。
実は今、原油価格そのものは下がってきています。たとえば、2025年1月時点のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)原油先物価格は、1バレル当たり約80ドルでしたが、2月には70ドルを割り込み、60ドル台に。3月時点で約67ドルです。ここ10年のトレンドを見ると、原油価格は50~60ドルを行き来しているので、そろそろ通常運行に戻りつつある。つまり、原油自体はかなり安くなってきていると言えるのです。
その一方、異常な値上がりを見せているのが天然ガスです。2025年2月には天然ガスの先物価格が大幅に上昇し、日本国内のガス代にも影響を及ぼしました。
その要因として、アメリカ北部で氷点下の寒波が発生し、暖房のための燃料需要が急増したことが挙げられます。さらに、天然ガスの在庫統計が急減したことを知らせるアメリカのエネルギー省(DOE)の発表によって、「ガスの供給が逼迫するのではないか?」という懸念が広がり、それが日本のガスの価格の上昇につながりました。