民営化のしわ寄せは末端の局員に

【宮崎】そもそも局長会は同質性・同調性の強い組織ですが、加えて「応援している候補を当選させ、得票数を伸ばすことが、ひいては郵便局の存続につながり、地域のためにもなる」という論理で、活動に力を入れている人もいる。そうした人からすれば、局長会を中心に行っていることは「いいこと・正しいこと」になりますし、使命感を持って取り組んでいる人もいるでしょう。

郵便局という存在自体が、「他の民間のサービスとは違って公の役に立っている」という面はありますよね。その仕組みを守ることの何が悪いのかと言われれば、気持ちはわからなくはない。地域の郵便局を統廃合すれば経営は効率化できるかもしれませんが、地域の郵便局がなくなってしまうことで、困る人も出てくる。そうした事態を防ぐためにやっているのだ、と。

一方で、民間企業として考えた場合、何をどこまでやるべきなのかには議論があります。保険や貯金はインターネットでもサービスが受けられる。全国の郵便局の窓口業務を今のまま運営するには年間1兆円にもなる莫大な維持費がかかり、利益を上げるためのしわ寄せが末端の局員に行っている現状がある中で、それでも全国2万4千の地域の郵便局網を維持すべきなのか。

結論は簡単には出ませんが、経営の合理化や時代に合ったサービスの導入も含め、考える必要があるはずです。

日本郵便のバイク
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日本郵政が力を入れている意外なサービス

――郵便局が地域に密着して、過疎地であればなおのこと、他のサービスがない中で郵便局の役割は大きい、と郵政側はアピールしています。しかし実際にはそれが悪用されて、保険を不正に販売したり、局長会のような他の民間企業ではありえない状況が温存されたりしている。「地域密着」が言い訳に使われているようにも感じます。

【宮崎】今、郵政グループが力を入れているのは、住民票の写しの発行など、役所の手続きを郵便局が請け負うサービスです。それによる収益は大きくはありませんが、公的な仕事を請け負って実績を積むことで「だからやっぱり郵便局は各地に必要なのだ」という既成事実をつくろうとしているようにもみえます。

これは郵便局網を維持するために公的な資金を投入できる仕組みを作るための法改正とともに、局長会が与党にあげている要望でもあります。経営効率化ではなく、公的な面をアピールして、何とか生き残りを図ろうとしているのだと思います。