人間関係を改善するためにできることを
パワハラ行為者へのカウンセリングでは、この人と「一緒に働きたい人がいない(あるいは少ない)のはなぜか」という視点で、パワハラ以外のクセもあるのではと探りながら話をしていきます。
たとえば、上記のA氏のような例を聞いたときには、その行為について、被害者からも(必要に応じて関係者からも)聞き取りを行った上で、「なぜそのような言動をするのか」「一緒に働く人がどんな気持ちになるか認識しているのか」といったことを本人に尋ねていきます。
カウンセリングでは、(パワハラ行為だけが問題の場合でも、そうでない場合でも)まず本人に「一緒に働く人を苦しめて、職場の人間関係を困難にしていること」をあらためて認識してもらい、「人間関係を改善するためにできること」を共に探っていきます。
そうすると、おのずとパワハラ行為を止めるべきことは自覚してもらうことができ、(良識の欠如が原因と考えられる)自己の非常識な言動にも向き合う気になってもらえます。
そういった段階になると、本人の抱える問題を共に特定・整理し、パワハラを含む非常識な言動を抑制するための技術的な指導に入っていくことができるのです。
「こういう物の言い方をするとパワハラに該当するので気をつけましょう」という手合いの研修等とは、かなり異なることがおわかりいただけると思います。
相談者のご指摘の通り、パワハラ行為者には、パワハラ癖だけでなく、他の問題(改善すべき点)もあることが多いものです。
パワハラ行為者への改善指導は、パワハラ行為に焦点を当てるだけでなく、より広い視点で問題を洗い出し、進めていくべきでしょう。
もともとグローバル人材育成を専門とする経営コンサルタントだが、近年は会社組織などに存在する「ハラスメントの行為者」のカウンセラーとしての業務が増加中。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科では、非常勤講師としてコミュニケーションに関連した科目を受け持っている。著書に『好きになられる能力 ライカビリティ』(光文社)『英語で学ぶトヨタ生産方式』(研究社)『英語で仕事をしたい人の必修14講』(慶應義塾大学出版会)など多数。