泡銭を儲けても幸せにはなれない
でも、いっぽうで、デイトレーダーなどといって1日中パソコンにはりついて、1秒ごとに売ったり買ったりして利鞘を稼いだりしている、なんてのは何が楽しいのでしょう。世のため人のためでもないことのために、ただ株券を売り買いして泡銭のような金を儲けてもおそらく達成感などは得られますまい。
たとえば、デジタルカメラがどんどん世に出てきたときに「これじゃあフィルム会社はいずれダメになるな」と想定する……そういう時こそ、投資の出番です。この時に当たって、たとえば富士フイルムという会社は、フィルム事業からさらに発展的な分野に、企業としての目をむけ、投資もしていった、つまり、もっとハイテクの医療機器だとか、新薬の創製だとか、化粧品の開発にまで業態転換をしつつ巨大な投資をして、今、目覚ましい業績を上げています。それは結局、経営者の見識の問題なのです。
1949年、東京生まれ。作家。国文学者。慶應義塾大学大学院博士課程修了。ケンブリッジ大学客員教授、東京藝術大学助教授等を歴任。専門は日本書誌学、国文学。著書に『イギリスはおいしい』『節約の王道』『「時間」の作法』など多数。『謹訳 源氏物語』は源氏物語の完全現代語訳、全10巻既刊9巻。