「今あるものは失わないようにする」賢い意識

そこで、これからはむしろ、小国寡民しょうこくかみん的政策になっていくほうがよいし、それがむしろ望ましい未来なのではないかと私は思います。

世界のモンスターのようなユダヤ資本なんかに対抗してやっていこうというのがそもそもの間違いで、日本は小さな国としてシンガポールのようにこまやかに穏やかに暮らしつつ、そしてささやかな幸福を希求するという方向に舵取りするのがいいのではないか、と思うのです。

だから、これから先はどんどんインフレになって経済成長していく、といった見果てぬ夢を見るのはやめにして、今あるものを失わないようにする。そうした後ろ向きなスタンスというのが、結局、賢いのではないのかなあと、私はひそかに思っています。

この「今あるものは失わないようにする」という意識は、個人にも当てはまるのではないかと思うのです。すなわち、「投資はいいけれど、投機はやめたほうがいい」という王道的な考え方にもつながっていきます。

投資の本来あるべき姿とは

投機は博打ばくちのようなもの、何をしているのかもろくに知らない会社の株なんぞを、目まぐるしく売り買いして、そこに法外な利潤を求めようとするのは、やはり道義的におかしいし、本質的リスクがそこに伏在するのは、博打がアブナイ行為であるのと同じことです。

そして、もし投資をしたいのであれば、本書で前にも書いたとおり、その会社が何をしようとしているのか、つまり業務の将来性や道義性をよく調べて、その発展性の確からしさはどのくらいなのか、経営者の人柄はどうなのか。あらゆることをよくよく取り調べて、「この人のやることならば、まあ間違いはないだろう」と見切れたところで、自分の持っている“余剰資金の範囲”で投資をするというのが、本来のあるべき姿に違いありません。

そのようにして買った株券は、原則として「売らないこと」です。

10年でも20年でも持っている。もし万一その会社が20年経ったら潰れてしまったとしたら、それは残念だった、自分の目がなかった、と思って諦めたらいい。投資には、そういうリスクはつきものだといわなくてはなりません。

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