世間の風潮はなぜ、キャッシュレス化に向かうのか。『節約を楽しむ あえて今、現金主義の理由』(朝日新書)を上梓した作家の林望さんは「できるだけ人件費をカットしたい銀行がアプリ決済などを勧めている。要は、銀行自体が儲けるためにしていることだ」という――。
「ふるさと納税はしていません」と言う作家の林望さん
「ふるさと納税はしていません」と言う作家の林望さん 出典=『節約を楽しむ あえて今、現金主義の理由』(朝日新書)

ふるさと納税はやりません

宝くじは買いますが、ふるさと納税はしていません。

ふるさと納税は2008年から始まった制度で、総務省の資料によると、2022年度のふるさと納税寄附額は約9654億円、納税寄附件数は約5184万件、利用者数は約891万人とのことです。

確定申告をすることで、所得控除が受けられるため、結果的に自己負担額2000円で牛肉や豚肉、くだものなど、日本各地の美味おいしいものが食べられるのですから、人気があるのもわかります。

もちろん、返礼品は食べ物だけではありません。各地のユニークなものがもらえたり、サービスを受けたりすることができます。本書をお読みになっている方の中にも、ふるさと納税経験者がいらっしゃるかもしれませんね。

しかし、私は最初に書いたように、ふるさと納税はしません。

過疎地なので税金があまり入ってこない。しかし、自分のふるさとだから、なんとかふるさと応援のためにお金を送りたい。自分がいま住んでいる所ではなく、ふるさとに送りたい……それが、2008年当時の総務大臣だった菅義偉すがよしひでさんが、基本的にやりたかったことだと聞いています。

ふるさと納税で一番儲かるのは誰か

ところが、返礼品のほうが大きく取り上げられてしまい、本末が転倒してしまった。

それで、ふるさと納税で商売する輩が出てきた。結局、一番儲かるのは業者でしょう。それでなければ事業が成立するわけがない。そこにおいてこのやりかたは間違っていると思います。こういう人の善意ですることにつけこんで、儲け仕事にしようという業者があるということ自体、有るまじきことと私は考えます。だからしません。

たとえば、今、能登のとにお金を送りたい。そう思ったら、義援金として寄付すればいいだけのことです。見返りを期待しないで。それが正しいでしょう?

郵便局に行けば、どこに振り込めばいいか、どこが義援金を必要としているか、詳しい情報もわかります。

たとえば、ふるさと納税で10000円払って3000円の物が来た場合、3000円の物を10000円で買ったのと一緒です。逆に相手にしてみたら、せっかく10000円貰えるところを3000円損したことになります。

だから、そんなことはしないで、始めからちゃんと目的を決めて寄付にすればいいわけです。日赤とかそういうところへの寄付だったら、ちゃんと税制上も控除にもなります。そういうふうに、もっとまともなことのために金は使ったほうがいいと思います。

ふるさと納税するくらいだったら、地元のお店から直接買ったほうがいい、と私はそのように確信的に思っています。