老化現象は「腎」の疲労が引き起こす
また、仕事にやりがいがあり、楽しく充実していることはよいことですが、夜遅くまで仕事をすることは、ちょっと危険です。なぜなら、過労は五臓の「腎」に過大なダメージを与えるからです。
「腎」は、成長や発育、生殖を司る臓器で、ホルモンや遺伝についても深く関わりがあります。体のさまざまな機能と密接に関わっており、いわゆる“老化現象”は、この「腎」の機能が低下したことによって起きる症状です。
中国古代の医学書『黄帝内経』では、女性は7の倍数、男性は8の倍数の年齢のときに、体に大きな変化が訪れるという記述がありますが、「腎」の機能は、女性の場合では28歳をピークに、男性では32歳をピークに、以降はなだらかに下降していくとされています。
しかしながら、その年を迎えなくとも、過労や座りっぱなしで歩かない、夜更かしなどの日々を続けていれば、「腎」にひどくダメージを与えますから、その衰えはもしかしたらピークを待たずして訪れるかもしれません。相談者の方も、実際、休日に起き上がれないほど働いているわけですから、すでに「腎」が相当なダメージを受けていると思われます。
「腎」の機能が低下すると、疲れやすくなったり、冷や汗が止まらなかったり、食欲が出なかったりと、さまざまな不調が表れます。また、今は若さゆえのエネルギーでそのダメージが目立った症状としては表れず、本人に実感はなくても、本格的な老化現象を迎えたときに症状が激しく表れ、人よりも辛い状況になる可能性は高くなります。
「腎」は、「精」という、生命力の根源であるエネルギーを蓄える袋でもあります。
その「腎」がダメージを受ければ、袋は小さく硬くなり、たくさんの「精」が中に収まることはできません。
つまり「腎」が弱るということは、命を燃やすためのエネルギーがどんどん減ってしまうということ。
「腎」の機能低下は誰しもに訪れ、そのスピードは人それぞれですが、できるだけゆるやかにすることは可能です。少し先の未来を思い浮かべて、無理は控え、「働く」(「陽」)と「休む」(「陰」)のバランスを大事にしてください。