〈寝付きやすく、眠り続ける効果も優秀〉新タイプの出現で睡眠薬の常識がガラッと変わった!《睡眠専門医が解説》(松井 健太郎/文藝春秋 2024年9月号)
画期的な新薬が、睡眠薬の常識をアップデートしている——。睡眠薬治療の新常識を、国立精神・神経医療研究センター病院睡眠障害センター長の松井健太郎氏が解説する。
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不眠症にもタイプがある
不眠症には、主に3つの種類があります。
(1) 入眠困難 床に入ってから寝付くまでの時間が30分を超えることが続く。
(2) 睡眠維持困難 夜中に目が覚めると、再び寝付くまで30分以上かかる。夜中にトイレに起きると、もう眠れないという人も当てはまります。何度か目が覚めてもすぐに寝られるなら、大丈夫。
(3) 早朝覚醒 起きるつもりの時刻より30分以上早く目が覚めてしまう場合を指します。
入眠困難と睡眠維持困難にはそれぞれ適した薬があるのですが、早朝覚醒にはあまり適当な薬がありません。早朝に目が覚めないように長時間効果のある薬を使うと、昼間まで効き目が残ってしまうのです。
では、不眠症と診断されたら、どんな睡眠薬を処方されるのでしょうか。睡眠薬には成分の違いがあるほか、効果を発揮する早さや長さによって、超短時間型、短時間型、中間型、長時間型という違いがあります。副作用の大小や現れ方も違います。処方された薬の特徴を患者の立場から知っておくことは、とても大切です。
受診したのが睡眠外来でない場合、医師が不眠症のエキスパートであるとは限りません。優れた薬が新たに登場しているにもかかわらず、以前から処方している古い薬を「使い慣れているから」という理由で出し続けている場合もありえます。
その薬が本当に自分に適しているのか、医師に尋ねても全く構いません。特に、初診でいきなり複数の睡眠薬や、抗うつ薬等も合わせて処方されたら、必ず説明を求めてください。私は初診で2種類以上の睡眠薬を処方することはありません。