新人、上司、顧客それぞれの「見え方」が違うゆえの悲劇

どっちが「正しい」のか? などという単純な話ではないことは、つかんでいただけましたでしょうか。

こうした事案は、「被害者・加害者」のような二項対立的な図式で語りがちかもしれませんが、「正しい・間違っている」でもなければ、「良い・悪い」でも語り尽くせないのです。

ただただ、ある状況で、お互いに見えている世界・認識が違う、ということです。

その状況で、お互いがかけているメガネが違うことを意識せず、誤って次のことに盲進していくのが、いわゆる「トラブル(傷つき)」の状態と言えます。

お互いに自己正当化と他者批判をすると、蟻地獄まっしぐら

どこか思い当たる節がないでしょうか? 社会学的には「他者の合理性」と呼ばれるものです。が、この視点がないと、

「あいつが悪いのに⁉ まったく」
「こっちは被害者だぞ?」

という自己正当化か他者批判という穴を自ら掘って自ら入っていくことになり、袋小路、蟻地獄まっしぐら。

しかしながら、多くの人にとって、

「あなたは間違ってない」
「悪いのはまわり」

とささやいてもらえたほうが、一見するとありがたいといいますか、留飲が下げやすい。

ゆえに、「ハラッサー」問題や、「メンタル不調者」問題、「職場の害虫」問題などなど、個人のラベリングやカテゴライズによる問題の個人化は、ビジネス界でもビジネス書界でも、引っ張りだこと言えます。

ですが、耳に心地のよいことばかりを言って、問題の矮小化(自分以外の誰かの悪者化)をつづける限り、「職場で傷つく」ことを本質的に解きほぐせないと考えるため、しつこく言わせていただきます。

会社の会議
写真=iStock.com/Yagi-Studio
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