新人教育の余裕がない企業では、管理職も「傷ついている」
なんとなく、わかりますよね。これは、さっきまで「ひどい上司だな」と感じた点を覆す視点ではないでしょうか。つまり何が言いたいかと言うと、
――上司も上司で「傷ついている」
ということに他なりません。
はたまた、「チップスとビール」で大事な娘の誕生会を台無しにされたクライアントの側に立つとどうでしょうか。
始末書に追い込むほど、旅行先から名指しクレームを激高した様子で入れてきたクライアント。その権幕たるや相当な怒鳴りこみの国際電話だったと聞いていますが、それも本人からしたら、無理もないのです。だって、大事な娘の誕生会で、日ごろの育児参加の埋め合わせを考えていたであろうに、ちゃんと聞き返すなり、確認してくれなかった若造のせいで、台無しになったのですから。
これも世が世なら、「ヤバい人」「クレーマー」とされてしまうのかもわかりませんが、ご本人の事情はどうでしょうか。これも直接もちろん本人に聞けたわけではありませんが、似通った相談からこんな想像ができます。あながち的外れではないと思うのです。
高い報酬を稼いでいるクライアントも競争で「傷ついている」
「日頃、『仕事と家庭どっちが大事なの?』と妻に繰り返され、時には離婚の二文字もちらつかされる中迎えた、背水の陣ともいえる娘の4歳の誕生日パーティー。
盛大に、娘が大好きなディズニーランドで開くことに決めたんです。そんな場で、ビールとポテト用意されちゃったんですよ?
僕はこれまで、完璧に仕事をこなしてきた。だから若くして、ここまで偉くなれた。ケア労働はすべて妻任せだと言われても、だからといって妻は妻で贅沢な生活を送れている。それが間抜けな若造の勘違いで、めちゃくちゃにされた気分。
人生がかかってるんですよ! 完璧な人生が。勘弁してくださいよ、クレームくらい入れさせてくれ‼」
――ああこの方も、労働世界の競争と、家庭というケア現場の狭間で「傷ついている」というわけです。