日本人はいつから未婚の男女の性行為に寛容になったのか。社会学者の山田昌弘さんは「1970年代から45年ほどの変化で、未婚者の性的関係を『不可』とする人は約6割から2割にまで減り、逆に、愛し合っていれば『可』とする人は半数近くに増えた」という――。
花火を見るカップル
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「昔の中高生の恋愛を調べたい」

今回は、男女の「婚前交渉」の意識変化について見ていきます。

「婚前交渉? 何ソレ」と思われる人も多いかもしれません。

「婚前交渉」という言葉は、今となっては死語でしょう。20年ほど前に学生対象のアンケートで私が使用したら、「どんな意味なんですか」と訊かれたくらいです。

「交渉」とは性行為のこと。つまり、未婚の男女の性行為を指すのが「婚前交渉」です。

同じく、2000年代のこと。私のゼミ生が、卒論で「昔の中高生の恋愛を調べたい」と相談にきました。そこでアドバイスしたのが、過去に存在した「学年誌」の内容分析です。

年配の方は覚えていると思います。ひと昔前、多くの生徒は、中学入学と同時に、旺文社の『中一時代』か学研の『中学一年コース(通称:中一コース)』を毎月定期講読し、高校進学後も『蛍雪時代』『高三コース』などを読み続けるという時代がありました。

こうした学年誌が発行されるようになったのが、戦後10年ほどのこと。旺文社が1956年に創刊(既刊の『中学時代』『高校時代』を学年別に細分化)し、学研がそれを追随、1960~70年代に全盛を極めるものの廃刊にいたるのが、旺文社は1991年、学研は1999年です。つまり学年誌とは、少年少女漫画雑誌と並んで、団塊の世代(現在75~80歳前後)やその下の世代(現在65歳以上)の多くが読んでいた雑誌だといえます。

学年誌における「グループ交際のすすめ」

その内容は、学校で習う教科の解説が中心で、学習塾がそれほど普及していない時代の参考書的な役割を果たしていました。中には、中高生の生活に関わる記事もあり、進級や進路の相談、友人やクラブ活動に関する悩みと同時に、恋愛の悩み相談なども載っていました。

前述のゼミ生は、旺文社にお願いして、1960年代に発行された学年誌の「恋愛相談」に関する部分をコピーさせてもらいました(私も後で読みましたが)。

彼女が読んで驚いたのは、その相談の回答によく出てきた「グループ交際のすすめ」です。

「グループ交際」と言っても、今の若い人には、何のことやらわからないでしょう。

例えば、「クラスに好きな人がいるんですけど、どうしたらよいでしょう」という問いに対して、1対1で交際するのはまだ早い、異性のことを知るために「男女とも数人同士の友達で、動物園などに出かけたら」と提案している。すなわちこれが、「グループ交際のすすめ」です。そしてこれが、男女の「婚前交渉」における象徴的な事例だといえるのです。

さっそく、時代をさかのぼりましょう。