「体感がまっすぐ」であれば良い姿勢

一人ひとりの姿勢を横から見てみると、当然ながら、背中の丸みや腰の反りなどにはかなりの個人差があります。

片山洋次郎『姿勢をゆるめる 疲れない身体と心の整え方』(河出書房新社) 
片山洋次郎『姿勢をゆるめる 疲れない身体と心の整え方』(河出書房新社) 

実際には背骨の形よりも、むしろ硬いかやわらかいかといった弾力や、動く際に重いか軽いかという姿勢の「質」の方が大切です。また形から見ても、その人にとって適正な範囲の背中の丸みと腰の反りがあるとも言えます。

姿勢が「まっすぐ」とは、外から見た姿勢ではなく、むしろ本人の体感を基準にした方が正解なのです。

たとえば、疲れて姿勢のどこかが固まって重苦しい、痛いと感じる場合、整体の場では姿勢のこわばりをほぐしていくことになります。

施術が進み、どんどんゆるんで力が抜け、首や肩・腰などの余分な緊張が抜けると、自然に下腹がギューッと縮んで力が集まります。すると、本人が意識して姿勢を正そうとしなくても骨盤がスッと自然に立ち、上半身(頭・首・肩・胸)は軽く感じるようになります。

身体が整い、自然に良い姿勢になっていると、自分自身が頭のてっぺんからお腹の底までスーッとまっすぐな線が入っているようにも感じます。これが本当の意味での「まっすぐな姿勢」です。

つまり、外見的な「まっすぐ」よりも、自分の体感的な「まっすぐ」の方が正しいと言えます。ですから、「自分の体感がまっすぐであれば、良い姿勢である」と見ればいいのです。

状況に応じて姿勢を変えられることが大事

健やかに日々を送るための良い姿勢には、形以上に大切な要素があります。

刻々と変わる身体の内外の状況に即して姿勢を変え、身心がリラックスしたり集中したりできること。自分自身の状態に即して、自在に姿勢を変化させられることです。

人それぞれ生まれ持っての体格や体型があります。他人から見て「悪い」姿勢でも、その人にとって気持ちが良ければ、それでいいわけです。

自分自身が楽でリラックスしやすく、また集中もしやすい。動作がギクシャクせず、なめらかに動く。

つまり、自分自身がつねに気持ちよくいられる姿勢。何かに集中したい時は全身がバランスよく緊張していて、集中状態が終われば、興奮や緊張が静まって自然にゆるんでいく。これが理想です。

片山 洋次郎(かたやま・ようじろう)
整体師

1950年神奈川県生まれ。東京大学教養学部中退。現在、身がまま整体 気響会を主宰。20歳代半ば、自身の腰痛をきっかけに整体に出会う。その後、野口晴哉の思想に触発されながら独自の整体法の技術を創り上げる。著書に『骨盤にきく』『身体にきく』『整体かれんだー』『女と骨盤』(以上文春文庫)、『自分にやさしくする整体』(ちくま文庫)、『生き抜くための整体』(河出文庫)、『呼吸をふわっと整える』(河出書房新社)などがある。