※本稿は、和田秀樹『コレステロールは下げるな』(幻冬舎新書)の一部を再編集したものです。
「コレステロール=害悪」は本当なのか
「コレステロール害悪説」を世界に広めた有名な研究があります。1948年に始まったアメリカのフラミンガム研究です。
当時、アメリカではいちばんの死因が心筋梗塞でした。心筋梗塞を減らすために様々な研究が行われ、「どうやらコレステロールが関係している」ということが見えてきたのです。アメリカは医学の最前線と思われてきましたから、日本の医学会が大きな影響を受けたのは当然と言えるでしょう。
図表1は、1993年に出されたフラミンガム研究の最終的な結果です。
「血液中のコレステロールが1mg上がると死亡率はどう変化するか」を年代ごとに調べたものです。
心筋梗塞は、図の中の「冠動脈性心疾患」に該当します。このデータを見ると、40歳代から70歳代に至るまで、コレステロールの上昇とともに心筋梗塞による死亡率が上がっていることがわかります(80代はマイナスになっているので、むしろ下がっています)。
コレステロールが増えるとがんの死亡率は下がる
では、他の病気はどうでしょう?
「非冠動脈性心疾患」は、40歳代では若干(0.1%)上昇しましたが、50歳代以上では、死亡率はマイナスになっているので、むしろ下がっています。
「がん」は、40歳代から80歳代まで、すべての年代で下がっています。
「総死亡率」は、40歳代は0.5%、50歳代は0.1%と若干の上昇を見せましたが、60歳代で横ばい、70~80歳代では下がっています。
つまり、フラミンガム研究の一部を切り取って「コレステロール害悪説」が広まってしまったのです。
高齢者にとっては、コレステロールは害悪であるどころか必要不可欠。このことは、様々な研究によっても明らかにされています。しかし日本では、いまだに70年以上も前の研究にミスリードされたまま、軌道修正できずにいるわけです。