立憲民主党の蓮舫参院議員が6月20日告示の東京都知事選に無所属で出馬することを表明した。ジャーナリストの尾中香尚里さんは「『党の顔』を都知事選に差し出した意味は大きい。選挙戦を通じて、『目指す社会像の違い』をしっかりと示してほしい」という――。
記者会見で東京都知事選に立候補すると表明した立憲民主党の蓮舫参院議員=2024年5月27日午後、東京・永田町の党本部
写真提供=共同通信社
記者会見で東京都知事選に立候補すると表明した立憲民主党の蓮舫参院議員=2024年5月27日午後、東京・永田町の党本部

「首都決戦」にようやくまともに取り組み始めた

立憲民主党が本気を出した。まずはそう評価できるのではないか。同党の蓮舫参院議員が5月27日、東京都知事選(6月20日告示、7月7日投開票)への出馬を表明し、3選を目指すとされる現職の小池百合子知事に挑戦する考えを示したことだ。

まごうことなき「党の顔」の一人。出馬表明が与えたインパクトは、過去の都知事選における現職への対立候補のなかでも、明らかに群を抜いている。

国会での質問力に定評のある蓮舫氏が、政権交代も視野に入ってきたこの状況で国政を離れることには、残念な思いもないわけではない。しかしそれ以上に、これまでどの野党もまともに取り組んできたとは言えない「首都決戦をガチンコ勝負に持ち込む」ことに向けて、初めてそれなりの「構え」をつくることに成功した蓮舫氏と立憲の判断を、ここは高く評価したいと思う。

野党第1党に求められているのは、選挙における「選択肢の提示」である。

国政では政権与党、地方政治では自治体の首長が進める政治の方向性に対して「別の道があるのではないか」と問いかけ、「目指す社会像」の選択肢を示す。つまり、選挙で対立候補を擁立し、その選択を有権者に委ねる。これが野党の大きな仕事であるはずだ。

都知事選で現職が敗れた例はない

国政選挙では、与党と野党が大きく2大政治勢力を形成して政権を争う形が、曲がりなりにも確立されつつある。だが、地方自治体の首長選は必ずしもそうではない。多くの自治体の首長選では「国政と地方選挙は違う」と釈明しながら、与野党が現職に「相乗り」するのが常態化していた。立憲に限らず、歴代の野党第1党は、自治体の首長選挙では、これまで十分な役割を果たしてこなかった、と言っていい。

その最たるものが東京都知事選だ。他の選挙に比べ有権者数の数が突出して多く、無党派層の比率も高い。新人が簡単に勝ちに行ける選挙ではない。実際に都知事選では過去、現職が敗れた例は皆無である。

それでも、誰かがリスクを取って、現職への「まっとうな選択肢」を提示しなければ、選挙は現職の信任投票の様相を呈し、選挙そのものが死んでしまう。