怒りは弱さの裏返し…

【編集部】マンガではミルもヤスミも「怒りに任せるといい結果にならなかった」と言っていますね。

【小川】その一瞬はストレス発散ができて気持ちがいいかもしれません。でも、相手も自分も傷つけて、結果的に苦しむことになる。

逆に冷静に対処できたときは、自分を誇らしく思うはず。同じことを言うにしても、感情で叱責するか、理性を使うのかで受け入れられ方も全く違う。

【編集部】理性を総動員して、あくまで冷静になることが大事なのですね。

【小川】みなさんもご存じの哲学者・ソクラテスは、奴隷に罰を与えなくてはならないとき、「もしも私が怒っていなかったら、お前を打ったところだ」と言った。つまり冷静でないときは罰を与えてはいけないと逆説的に言ったのです。

さわぐちけいすけ・小川仁志『哲学を知ったら生きやすくなった』(日経BP)
さわぐちけいすけ・小川仁志『哲学を知ったら生きやすくなった』(日経BP)

例えば子どもを叱るのは、子どもが何か悪に陥ったり、悪い習慣が付いたりすることから守るためですが、冷静でなければ守りではなく、単なる破壊になってしまう。

【編集部】今回のヤスミもそうですが、疲れがたまったり自分に余裕がなかったりすると怒りが大きくなりがちですよね。

【小川】私は怒りというのは、弱さの裏返しだと思います。すぐカッとなる人は、自分の余裕のなさが怒りに置き換えられているともいえる。ですから、普段から時間的・精神的なゆとりを持ち、弱っているときには自分をいたわってあげるなど、工夫も大事だと思います。

さわぐち けいすけ(さわぐち・けいすけ)
漫画家

2017年から漫画家として活動。社会に生きる人々の心境を描く書籍制作の依頼を手掛け、SNSの中ではPR漫画やオリジナル漫画などを制作し投稿。Xフォロワー19万人。主な著書に『哲学を知ったら生きやすくなった』(日経BP)、『偶発的ルネッサンス少女』(朝日新聞出版)、『経営理論をガチであてはめてみたら自分のちょっとした努力って間違ってなかった』(日経BP)、『だからお前はダメなんだ』(大和書房)、『僕たちはもう帰りたい』(ライツ社)など。

小川 仁志(おがわ・ひとし)
哲学者・山口大学国際総合科学部教授

1970年、京都府生まれ。京都大学法学部卒、名古屋市立大学大学院博士後期課程修了。博士(人間文化)。専門は公共哲学・政治哲学。「哲学カフェ」の主宰やメディア出演など幅広く活動。著書に『悩まず、いい選択ができる人の頭の使い方』(アスコム)、『『ドラえもん』で哲学する 物事の見方が変わるヒント』(PHP文庫)ほか多数。