いい大人と会ったことがなかったから
伊澤さんは将来何屋さんになりたいですか。
「何屋さんというか……世界の動物を助けるような仕事というか……。テレビのドキュメンタリーとかで希少動物とか助けている人を見て、いいなと思って、動物に関わる仕事したいなと思ってたけど、具体的には何もなくて……」
最初に好きになった動物は?
「犬」
猫も虫もOK?
「大丈夫です」
その仕事に就くために進む学校、例えば帯広畜産大学とか、弘前大学農学生命科学部とか、そういう具体的な学校の名前はイメージしていますか。
「そこまで決めてるわけじゃなくて……」
今、2年生の9月です。決めるまであとどれくらい時間があると考えていますか。
「1年ぐらい。焦り? あんまりない」
伊澤さんが仕事を手に入れようとするときに、障害物や弱点になっちゃうものは何だと思いますか。
「動物関係だと、いろんな動物と関わることになるから、アレルギーとか出てきたら……。もともと、鼻はちょっと、花粉の時期とかクシャミも鼻水も出るし。今、たくさんの動物と毎日一緒にいるわけじゃないから、アレルギー出るかどうかもわかんないし。やってみないとわかんない。ちょっとずつ、動物と一緒にいる時間とか増やしていくと、慣れて、免疫できて、抵抗力ついてアレルギー出なくなるとか、そういう方法もあるって聞いたし。あと、コミュニケーション能力」
コミュニケーション能力には、聞く、話す、回す、盛り上げる、まとめる、いろいろあると思うのですが、伊澤さんの課題は特にどのあたり。
「まとめる、とか。聞くのは嫌いじゃないし」
この2日間一緒に車に乗ってますけれど、伊澤さんとのコミュニケーション、リラックスできてすごくいいと思います。
「そうですか?」
「TOMODACHIサマー2012 ソフトバンク・リーダーシップ・プログラム」での3週間、伊澤さんはリラックスできましたか。
「嬉しかった。最初は不安とかもあったけど、いろんな人と会ったし、考え方も変わったし、大切な思い出かな。いろんな大人とも会ったし。あまりいい大人と会ったことがなかったから……」
いい大人とは、伊澤さんにはどういう人ですか。
「夜に家で家族と話とかしてるみたいに、普通に笑いながら、自然にしゃべれる人。大人ぶらないで、自然に居てくれるかんじの。これ、個人的な話になるけれど、友だちとかでタバコ吸ってたりする人がいて、そのことで先生に『お前も吸ってんだろう』とか言われて。『吸ってない』って言っても、『いや吸ってんだろう』って。そういう偏見とか、すごい感じるときがあって」
内陸部に暮らす伊澤さんは、沿岸部の被災現場を見なければと考え、動いた。岩手県の内陸部は、津波を受けた沿岸部のような壊滅的被害を受けたわけではない。「行かなくちゃと思って。行けば見えるものあるかなと思って」という伊澤さんのことばを裏返せば、内陸では震災が「見えない」ということでもある。
だが、高校生たちの祖父の世代が少年だった頃に、このあたりは被災の現場だった。岩手の内陸部——北上川流域は2年連続で大洪水に襲われている。
(明日に続く)