連続テレビ小説「ブギウギ」(NHK)はなぜヒットしたのか。同作脚本家の足立紳(櫻井剛と合同執筆)さんと娯楽映画研究家の佐藤利明さんが対談。足立さんは「ヒットの最大の理由は? と聞かれたら、最終オーディションで『この人に演じてもらいたい』と思った趣里さんのすばらしさに尽きる。他にも僕の無茶振りを受けてくれた草彅剛さんをはじめ、魅力あるキャストに助けられた」という――。

※この対談は2024年3月22日、書泉グランデ(東京都千代田区)で行われたイベントの模様を再構成したものです。

「ブギウギ」がヒットしたのは、まず主演の趣里ありきだった

【佐藤】「ブギウギ」はスズ子(笠置シヅ子)を中心にした群像劇であり、いろんな人が出てきますけど、まず、スズ子役の趣里さんがすばらしかったですね。歌はどんどん上手くなるし、ラインダンスでもきれいに足が上がるし。もちろん、演技もすばらしかった。

【足立】本当にすばらしかった。「ブギウギ」の何がよかったかをひと言で言うなら、趣里さんがすごかったということに尽きると思います。

脚本家の足立伸さん
脚本家の足立紳さん(写真=本人提供)

【佐藤】ヒロイン役のオーディションのときは、足立さんも参加したんですか。

【足立】最終オーディションに行きました。趣里さんと他に7、8人くらいの俳優さんがいらっしゃったんですが、趣里さんが一番面白かったんですよね。歌の上手さは、僕はよくわからなくて、みんな同じくらいなんじゃないの? とも思ったけれど、お芝居が本当に愛くるしく、コロコロと変わるいろんな表情されていたんですよね。その時点で台本は第3週ぐらいまで書いていたので、「この方がスズ子を演じてくれたら、これは視聴者の皆さんからそうとう愛されるんじゃないかな」と思いました。

服部良一をモデルにした羽鳥を演じた草彅剛の快演

【佐藤】趣里さんは、笠置さんが持っていた愛嬌を表現して、人前では元気印でいるけれど、いろんなことを経験し、いわゆる“大阪のおばちゃん”になっていくという表情の変化がすごくよかったですよね。しかも自然なんです。そして、作曲家の羽鳥善一を演じた草彅剛さんもみごとでしたね。もはや服部良一さんという存在を超えて、羽鳥善一という人が出てくるような……。

【足立】服部良一さんに関する本を読んだ時に、良一さんは新曲ができたら深夜だろうが早朝だろうが、とにかく家族を起こして「聞け聞け」ってやっていたらしいんですよね。その感じがすごいいいなと思って。僕も台本を書き上がると、すぐ妻に読んでもらいたくて、「読んで読んで」と、寝ているところを無理やり起こして怒られたりするので(笑)。その良一さんの賑やかな感じを描こうと思いました。

【佐藤】羽鳥家のホームドラマ、面白かったですよ。服部良一先生のお宅を垣間見ているような気分になりました。

【足立】あと、ドラマの音楽を担当してくださった服部隆之さん(良一の孫)とご飯を食べに行ったんですけど、ずっとニコニコしていらして、そのにこやかさがすごく素敵だなと。だから、羽鳥善一は隆之さんのにこやかさと良一さんの明るさを足して“二で割らない”感じで書きました。