12月16日は衆議院議員選挙。多党が乱立し、集散離合を繰り返す異例の事態となっています。争点もぶれがちで、各政党の政策も曖昧。有権者にとっては悩ましいところです。投票前に頭を整理するために、政策を軸にして各政党をマッピングしてみましょう。

経済分析の視点から見た政策軸

私は仕事上、日本の政治を外国人に説明することがよくあります。さまざまな政治家がいて、多くの派閥があって、ありとあらゆる意見が飛び交っています。とくに頭が痛いのは、同じ政党の中で正反対の意見を持つ人たちがいるということです。これらを含めて、「いま日本の政治はどうなっているのか」を、日本の政治事情に精通していない海外投資家に説明しなくてはなりません。これが大変なことなのです。そこで、出発点としては政策を軸にグループ分けをすることから始めました。

日本だけでなく、多くの国において、1つの軸は「大きな政府/小さな政府」です。極端にいえば、社会主義か資本主義か、ということです。もう1つは「積極外交/消極外交」です。軸のとり方は他にもあるでしょう。しかし、私が専門としている経済分析の視点からいうと、この2軸が基本になります。

非常に複雑な事象や現象を、予備知識のない人にわかりやすく説明するときにまず考えるべきは、「分類」です。そのためのもっとも簡単な方法が対立軸を用いることです。対立軸が2つあれば、4象限できますから、一見複雑なこともかなり整理して見せられます。

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さきほどの2軸を使うと、図のようなグループ分けが可能です。左下(大きな政府、消極外交)に民主党のいわゆる守旧派がいます。昔の社会党のスタンスです。共産党も同じ象限です。左上(大きな政府、積極外交)が自民党の守旧派です。日米関係強化、公共事業推進、の立場です。

最近は、民主党守旧派(旧社会党系)の人たちがだんだんと上へ移動しています。領土問題や北朝鮮の核開発問題などがあり、やはり消極外交ではダメだということになってきているのでしょう。

いま、世界を見渡しても「小さな政府、消極外交」という組み合わせの政策を打ち出している人はほとんどいません。一方で、「小さな政府、積極外交」という政策の人たちは割と多い。日本では小泉政権が典型でした。いまの民主党の改革派、自民党の改革派、みんなの党も、程度の差こそあれ、同じ路線です。

この図で見ると、民主党は左下と右上、自民党は左上と右上にまたがっています。このような状況では政策を基準にして投票することができないので、政党選挙が機能しません。さらに悪いことには、インサイダー政治が横行します。

その点、2011年の大阪の市長選挙は非常に明快でした。選挙では、現職だった平松邦夫さんを、民主党、自民党、共産党が支持しました。図でいうと左下および左上に位置するグループです。対して橋下徹さんは右上でした。大阪市民はこの選挙で、少なくとも政府を大きくするか小さくするかの横軸ではっきりした選択肢を提示され、圧倒的多数が右上のほうを選びました。2005年の「郵政選挙」も似た結果でした。

消費税の問題で小沢さんが新党をつくって出て行ったとはいえ、いまの民主党は左下から右上まで(たとえば横路孝弘さん、前原誠司さん)が入っているので、選挙をしても何も変わりません。それで国民にフラストレーションがたまるのです。野党になった自民党も分裂しています。ですから、民主党か自民党かという選択肢は、極端にいえば見せかけのものです。これが日本の政治が非常にわかりにくい原因なのです。

一見わかりにくい現象も、このように対立軸を使ってマッピングすると、わかりやすく説明することが可能です。