会話がすぐにケンカになってしまう

私のもとには、夫婦関係の改善のためのカウンセリングに来られる方もいます。例えば、こんな相談です。

「夫と話していると、ついついケンカになってしまうんです。そうするつもりはないのに……。このままでは離婚しなくてはならなくなってしまいます。子どももいるので、できればそれは避けたいのですが……」

ケース2
「車の査定に行ってきたけど、もう売るって決めてきたよ」
「えっ、そういうの、勝手に決めるのはやめてほしい!」
「だって、もともと僕が独身時代に自分のお金で買った車だよ」
「普通、そういう大切な話はいったん持ち帰って、夫婦で話しあって決めるものなんじゃない? 自分ひとりで決めるなんておかしいでしょ」
「“普通”って何だよ。それは違うだろう。僕の車なんだから、いくらで売ろうと勝手じゃないの⁉」
「普通、大きなことは夫婦で話しあって決めるべきでしょ!」
ケース2の改善例
「車の査定に行ってきたけど、もう売るって決めてきたよ」
「……え……もう決めてきたの……ビックリ……」
「思ったよりいい値段がついたよ」
「そうなの……まあ、あの車、もともとはあなたのものだから……。ただ、私にも愛着があるから、一回相談してから決めてほしかったな。ちょっとビックリしたし、ひとりで決められちゃって、少しさみしかったな」
「そうか、悪かったね。一言相談しておけばよかったね……」

攻撃するより「気持ち」を打ち明ける

ケース2では、妻は「普通、大きなことは夫婦で話しあって決めるべき」と、「“普通”はこうする」という一般論を自分の「意見」として述べています。

妻が「意見」を語っていると、受ける側の夫は、なんだか非難されている気持ちになるし、それに対する自分の賛否や「意見」(「それは違うだろう。僕の車なんだから……」)を語らなくてはならない気持ちになってしまいます。

「普通は……」と夫に自分の「意見」を言って責める前に、「ちょっとビックリした」という「気持ち」や、(自分に相談するプロセスを省かれて)「少しさみしかった」と自分の「気持ち」を素直に伝えるようにしましょう。そのほうが相手もずっと受け取りやすくなります。

このように、自分の気持ちをそのまま言葉にするほうが、相手にはずっと伝わりやすくなります。「気持ちを受け止めればいいんだな」という構えがとりやすくなるからです。

また、この会話では「普通」という価値観をきっかけに、売り言葉に買い言葉で攻撃が始まっています。夫婦関係に限らず人間関係では、一方が攻撃を始めると、他方も攻撃をして応戦するパターンに陥りがちです。攻撃されてイラッとしたら、その場から物理的に離れることをおすすめします。