アドバイスよりもねぎらいが先
妻「今日、子どもが宿題をやりたがらなくて大変だったのよ」
夫(妻のほうに視線を向けて)「それは大変だったね」
妻「そうなのよ。毎日、やりたくないが続いて……」
夫「そっか……毎日か……。それは大変だ。いつも子どもの勉強を見てくれて、ありがとう」
妻「ううん」
夫「僕も今度早めに帰って、宿題を見るようにしてみるよ」
妻が訴えているのは、「子どもが宿題をやらない」という事実だけではありません。いやがっている子どもと向きあうつらさ、大変さをわかってもらいたくて、「大変だった」と訴えているのです。まずは妻の気持ちを受け止めて、いたわり、ねぎらいの一言を添えることが先決です。とはいえ、何か特別なことを言う必要はありません。
「そうか」「それは大変だね」
この一言で十分なのです。
「大変だったね」と妻の気持ちに寄り添う一言、そして「ありがとう」と苦労をねぎらう一言があってこそ、妻には、「この人は私の話に関心を抱いてくれている」「私の気持ちをわかってくれている」と感じます。気持ちと気持ちのつながり(リレーション)がつくられるのです。アドバイスをするとしても、その後です。
人は「自分のことをわかってくれる」と思える相手からでなければ、たとえよいアドバイスをもらったとしても、それを受け入れることなどできないでしょう。
不満を解消する「1日5分」の工夫
結婚している女性が、夫に対して一番不満に思っているワースト1は、「夫が話をちゃんと聞いてくれない」ということです(カウンセリングの場で、「夫にもっと話を聞いてほしい」「わかってほしい」という言葉を何度聞いてきたことか……)。
そこで私は、講演会でよく、次のような宿題を出すようにしています。
「1日5分でいいから、お互いに愚痴や弱音を聞きあいましょう」
例えば、一緒に夕食をとるときに、まずは妻から夫に、「一杯どうぞ」とビールでも注ぎながら「今日は大変なこと、なかった?」と聞きます。妻は「まあ、そんなことがあったの。それは大変ねぇ」と、うなずきながら聞くようにします。
5分経ったら交替して、今度は5分、妻が夫に愚痴や弱音を聞いてもらいます。
「PTAでこんなことがあってね、陰口が飛び交ってて、もうドロドロ……」
「それはつらかったねぇ」
こんなふうに一方的ではなく、夫婦でお互いに弱音や愚痴を聞きあう習慣をつくること。これが、夫婦でわかりあえる関係をつくるための第一歩です。