――つまり、現実逃避してしまう?
その通り。相撲の世界に『土俵のケガは稽古で治せ』という言葉があります。一見乱暴な言い方ですが、そのウラには、『ケガを怖がるな』というメッセージが隠されている。仕事のスランプも同じで、営業回りのスランプのときは、こまめに外に出て、小さな契約でも取ってくる。そうやって自信をつけることで抜け出すのが一番の近道!
――ほかにスランプの脱出法は?
ミスやエラーを反省しすぎないことです。認知心理学によると、ミスを反省するとかえって行動が萎縮して、また新たなミスを引き起こしやすくなるそうです。私は現役時代、そんな泥沼状態の部下を目にしたら、必ずイエスと言ってくれる顧客のところに連れていって商談させたものです。もちろん私はついているだけ。クロージングまでやらせて『成功と手柄』を与えました。
いくら負けパターンを分析しても、勝ちパターンというものは学ぶことはできません。しかし、小さな成功体験をきっかけにすれば、早めにスランプから抜け出せます。そして、それをアシストするのは上司の務めだと考えています。
――スランプに陥らないようにするための、予防策のようなものはあるのか?
これは部下への手紙にもよく書いたことですが、マイナス言葉を口にしないこと。『不景気だから売れるわけがない』とか『資金不足だから大手に勝てない』などといった言葉は禁物。
ついそんな言葉が出そうになったら、『不景気だからこそ、売れる商品がきっとある』とか『資金不足でも大手に勝てる抜け道はなんだろう』という言葉に言い換えて、声に出してみる。すると自分自身もそれを聞いた周りの人間も、前向きな気持ちになって活気づくのですね。
ツキを逃さない人たちは、どんなときでも『どうすべきか』を冷静に考えられる人です。手本なきこの時代だからこそ、これからは自ら新しいビジネスの手本を考えようとする人が重用されると思います。