職場の環境が引き金になることも

職場の環境が引き金になることもあります。たとえば、ずっとデスクにいなければいけない状況や、会議室、エレベーターなどのように閉鎖的な空間で、複数の人が集まって話しているときも起こりやすくなる人もいます。

また「急かされる状況」が苦手な人も多く、締め切りやノルマが厳しいことが発症のきっかけになることもあります。

閉鎖的な空間や、急かされる状況が引き金になることは多いですが、ほかにも、会社の集まりや飲み会などの人が集まる場や、暑すぎたり寒すぎたりするところなどの、「不快な環境」が発作につながる人もいます。特に冬は危険な季節です。防寒のためにコートやマフラーを着込んでいるところに、電車に乗ると暖房がきいていて、さらに雨や雪だといきなりムシムシした環境になって不快感が増すので、パニック発作が起こる人が増加します。

前に発作が起きた場所に行けなくなる

「予期不安」も厄介です。予期不安とは、一度パニック発作が出た場面を脳が覚えていて、また同じ場所に行こうとすると、体が硬直したり、過呼吸になったり、震えが止まらなくなったりすることです。

前におぼれそうになった海に、また行くようなもので、「またおぼれるんじゃないか、死にそうになるんじゃないか」という恐怖心に襲われてしまう。本人が頑張って行こうとしても、体が全力で拒否して、本当に体が動かなくなるのです。過去に電車の中でパニック発作が起きた人の場合は、「また同じことが起きるのではないか」という不安から、改札を入ってホームまでは来たものの、どうしても電車に乗ることができず、遅刻したり、休まざるをえなくなったりすることがあるのです。会社に行けなくなることもあります。

苦手な場所が広がり行動範囲が狭まってしまう

3つ目の症状は「広場恐怖」です。予期不安が、一度行ったところにもう一度行くことに対して恐怖心が出るのに対し、広場恐怖は、初めて行く場所であっても、過去に発作が起きた場所と似た場所に行くことに対して、強い恐怖心が出ます。

たとえば電車で発作が出た人が、同じように閉鎖的な空間で移動する飛行機やバスなどの乗り物にも乗れなくなる。さらに、自由に動くことができず拘束された状態になる、歯医者や美容院などにも行けなくなる。こうして苦手な場所が連鎖的に広がり、行動範囲が狭まって、行動が制限されてしまうようになるのです。

地下鉄につながる階段通路
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