サビル事件とジャニーズ性加害問題の共通点
Netflixで「ジミー・サビル 人気司会者の別の顔」というドキュメンタリーが配信されている。サビルは、ジャニー喜多川を彷彿とさせる人物だ。
サビルはイギリスの大人気国民的タレントで、1960年から2010年代まで活躍した。テレビスターでありながら、病院を建てる慈善事業をしたり、チャールズ皇太子にパブリックリレーションズのアドバイスをする仲だったり、とにかく国宝級の人物だった。2011年にサビルが死んだ時、王室関係者並みに盛大な葬式が執り行われた。
しかし死後、実はサビルが40年間に渡り、行く先々で子どもに性的虐待をし続けていたことが判明した。被害者は子どもから75歳まで男女500名以上に及ぶとされている。
サビルの裏の顔は連日報道され、国民は不快感をあらわにした。
サビルの遺言により墓石に刻まれていた言葉「It was good while it lasted.(あの頃はよかった)」は削られて消され、墓石は撤去された。サビルを讃えていたマスコミは「われわれは真実を見つけられず、国民を裏切った」と反省を表明し、サビルを讃えるために取り付けられた銘板や銘文は各地から撤去され、サビルの痕跡は抹消された。
このドキュメンタリーの中で私が最も、今の日本のジャニーズ性加害問題と重なると感じたシーンがあった。
サビルの死後、サビルの仲良しとして周知されていた人や、プロデューサーとしてサビルと一緒に働いていた人が、世間やマスコミからめちゃくちゃ責められたというエピソードだ。
「絶対知ってたはずだろう」「どうして気づかなかったんだ」「なぜ止めなかったんだ」と聞かれる。
テレビのインタビューで「一緒にいたのに、何も見なかったし、聞かなかったというんですか?」と詰問されるプロデューサーのオーディッシュ氏。
オーディッシュ氏は当時を振り返ってこう語る。
「死人は罰せられないが、責めるべき人間は探せる。そういう雰囲気があった」
当の本人は死んでしまったため、償いも審判もされない、それが世間の怒りの原因となっている、と関係者は話した。