ハラスメント行為は聞き取りで浮き彫りになる

行為者へのカウンセリング以外で実施するのは、パワハラがあるとされる組織の従業員への聞き取りです。

パワハラに限定せず、「職場の人間関係やハラスメントで困っていることはありませんか」と尋ねます。

「それに答えると、私が言ったとわかってしまうので……」というリアクションが多いのですが、この聞き取りをすると、その組織の中に本当にハラスメント行為がありそうか、誰がハラスメントの行為者かといったことが、(当たり前のようですが)浮き彫りになってきます。

もともと従業員の多くが知っていることもありますが、聞き取り結果の報告会をすると、「こんなに多くの従業員が同じことを思っていたのか」と担当者が驚いたり、ぜんぜん知らなかったと驚く人がいたりします。

その結果をどのように問題の解決につなげるか。それはケースバイケースですが、聞き取りを実施することは、「組織はハラスメント行為を問題視している」という従業員への意思表示になり、やるとやらないでは違いがあると実感します。

ストップ
写真=iStock.com/nzphotonz
※写真はイメージです

まずは誰かが声を上げる

パワハラが野放しにされると、長期間に及んで人が傷つき、組織が悪い影響を受け続けます。

相談者の方は、ぜひパワハラを認め対処するよう、働きかけを行っていただきたいと思います。

ハラスメントを容認しない体質を根づかせるには、まずは誰かが声を上げることが大切です。その先に、ここに紹介した例を含む、解決策の提案を得る機会があるのです。

松崎 久純(まつざき・ひさずみ)
サイドマン経営・代表

もともとグローバル人材育成を専門とする経営コンサルタントだが、近年は会社組織などに存在する「ハラスメントの行為者」のカウンセラーとしての業務が増加中。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科では、非常勤講師としてコミュニケーションに関連した科目を受け持っている。著書に『好きになられる能力 ライカビリティ』(光文社)『英語で学ぶトヨタ生産方式』(研究社)『英語で仕事をしたい人の必修14講』(慶應義塾大学出版会)など多数。