パワハラの問題に向き合う状態とは

それでは、「パワハラがあることを認め、問題として対処しようとする」とは、具体的にどんなことを意味するのでしょうか。

その1つの例になると思いますが、私が依頼を受けて行うのは、パワハラの行為者(パワハラをする側の人)に対するカウンセリングです。

パワハラの被害にあった人へのカウンセリングは一般的かと思いますが、私はパワハラをする側に対してのカウンセリングを受け持っています。

パワハラがあることを認め、問題として対処するといっても、組織が俊敏に動いて、パワハラが見つかればすぐさま相談があるというわけではなく、行為者による被害が相当に広がり、精神的な被害を受けている人たちの存在を隠せない状態になったり、パワハラ行為者を名指しで非難して辞めていく人が出てくると、ようやく重い腰を上げるのが(残念ながら)普通です。

大抵の場合は、やっと組織の上層部から「対応するように」と指示が出て、担当者の方から相談を受けます。

これが組織にパワハラがあることを認め、問題として対処しようとしている状態の一例です。積極的でなかったにしても、一応向き合った状態になったのは、おわかりいただけるでしょうか。

採用面接のイメージ
写真=iStock.com/SARINYAPINNGAM
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パワハラ行為者がカウンセリングを受ける時

私は依頼を受けて、パワハラの行為者である本人も同意した場合に限り、カウンセリングを実施します。

事前に行為者本人には内緒で、職場の様子を見に行ったり、担当者から問題の詳細を事細かに聞いてから、本人との長時間のカウンセリングを複数回行います。

パワハラの行為者も、カウンセリングなど勧められるのは本意でないと思いますが、勤務先の組織が自分の日頃の言動を問題と捉え、専門家にまで相談しているとなると、カウンセリングを断る人はほとんどおらず、概ね本当に考えていることを話してくれます。

もともと私は、このカウンセリングをやりたいと自分から申し出たわけではないのですが、私が『好きになられる能力 ライカビリティ 成功するための真の要因』という人間関係に関連した本を執筆し、企業や役所での研修や大学院でも講義していたのを知っていた知り合いから、「どうしても当社でカウンセリングを」と依頼を受けたのです。

はじめは断り切れずに請け負いましたが、数カ月後に、その企業の役員の方から、カウンセリングの効果に驚いているというメッセージをいただき、私自身もカウンセリング(カウンセリングの内容については次回の記事にて執筆予定)がどのような評価を受けたのかを具体的に知ったのです。

それから同じような依頼を他の組織からも受けるようになったのですが、あらたな相談を受けるたびに、「パワハラと向かい合うことにした組織」の行為者と接しています。