「感謝」の定義

「感謝(gratitude)」とは、物事を大切に味わい、それを当たり前だとは思わず、現在に価値をおくものです。また、「ネガティブ感情」の解毒剤であり、ねたみや強欲、敵意、不安、いらだちを中和させるものでもあります。普通は「感謝」といえば、何かをもらったり恩恵を受けたりしたときにお礼をいうことと単純に結びつけがちです。けれども、私は読者のみなさんに、「感謝」の定義をもっと幅広く考えていただきたいと思います。

世界的に有名な「感謝」についての研究者で、作家でもあるロバート・エモンズは、「感謝」を「生きていることへの驚きやありがたみ、そして価値を感じること」だと定義しています。たとえば、かつての恩師に電話をして、人生の岐路で自分を導いてくれたことにお礼をいう。子どもとすごす時間を楽しむ。自分の人生におけるよいところをすべて思いだす、などの行為を通じて、「いま、自分がどれほど幸運な環境にいるか」ということ(または、どれほどひどいことになっていたかわからないということ)を認識することにより、ありがたみを感じることができるものです。

お礼の花の形をしたピンクの付箋紙に手書きのありがとうテキスト
写真=iStock.com/Marinela Malcheva
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「感謝」することで得られるさまざまな恩恵

最近では、「感謝」にさまざまな恩恵があることが注目され、新しい研究が始まっています。感謝の念を決して忘れない人はそうでない人に比べて、より幸福で、よりエネルギッシュで、より希望に満ちていることがわかっています。そして、「ポジティブ感情」を抱きやすいことが報告されています。さらに、あまり感謝の気持ちをもたない人よりも、人を助け、共感でき、信仰心に厚く、寛大で、さほど物事に執着しない傾向があることも明らかになっています。感謝をよく示す人ほど、落ち込んだり、不安になったり、孤独を感じたり、嫉妬したり、ノイローゼになったりしにくいこともわかっています。

このような研究から、「いいこと」と「感謝」には相関関係があることはわかります。けれども、感謝の気持ちを抱くことがさまざまなよいことを起こす(または悪いことを防ぐ)真の原因かどうかは、完全にはわかっていません。