「同じ毎日」はふしあわせなことではない
若いころの僕は、そんなことにはまったく気づきませんでした。
日々の生活や人生には、いろんなことが起きて、毎日、何らかのスペシャルがあることこそが、楽しくて、豊かで、しあわせだと思い込んでいました。
「退屈だ」とか、「つまらないな」と思うことは、幼ければ幼いほど思いがちだったし、僕も若いころまでは「おもしろいこと、何かないかな」と考え続けていました。
けれども、大人になってから、「退屈だ」とか、「つまらない」ということに対する解決法は、スペシャルを計画することではないのかもしれない、と思うようになったのです。
「同じ毎日」ということは、けっして、自分にとってふしあわせなことではないと気づきました。
変わらぬ同じ毎日からは、いつも心に余裕が生まれ、いつも心が整った状態で仕事をし、暮らすことができます。当然、コンディションはよいので、仕事の成果も上がり、人間関係や暮らしには、安心という豊かさが生まれるでしょう。
そうです。今日は何も起こらなかったことに安らぎを覚える。そのしあわせに感謝する、そんな日々が、僕の心と身体を癒してくれているのです。
2002年セレクトブック書店の先駆けとなる「COWBOOKS」を中目黒にオープン。2006年から9年間『暮しの手帖』編集長を務め、その後、ウェブメディア「くらしのきほん」を立ち上げる。ユニクロの「LifeWear Story 100」責任編集。Dean & Delucaマガジン編集長。他、様々な企業のアドバイザーを務める。著書に『人生を豊かにしてくれる「お金」と「仕事」の育て方』『僕が考える投資について』(ともに祥伝社)、『伝わるちから』『いちからはじめる』(ともに小学館文庫)など多数。