理不尽な言動や状況に傷つき、夜も眠れくなるときはどうすればよいのか。エッセイストの松浦弥太郎さんは「どんな出来事や状況、言動でも、基本、肯定的に捉えてみる。同時に、必然の学びと受け止めて感謝をする。感謝する気持ちを抱けば、眠りはやってくるはずだ」という――。

※本稿は、松浦弥太郎『眠れないあなたに おだやかな心をつくる処方箋』(小学館)の一部を再編集したものです。

コンプレックスを強みに変える

どうして自分はこうなんだろう。と考えてしまう夜があります。

心配しないでください。誰にだってコンプレックスはあります。

僕は、コンプレックスに対して、自分なりに向き合い、しっかりと受け止めて、できるだけ何かをする際の重荷にならないためにはどうしたらいいかと考えてきました。

コンプレックスから生まれる、怒りやいらだちを感じたら、その感情は誰のせいでもなく、自意識によって芽生えたものにほかならないと言い聞かせましょう。そして、コンプレックスを自分の強みに変えていくように、その中からプラスに値する意味や事柄を探してみるのです。

僕は若いころから、コンプレックスについて、自分以外にその解決を求めても意味がないと気がついていました。不甲斐ふがいない自分を正当化するための言い訳のように感じていたのです。

とはいえ、コンプレックスをゼロにすることはできません。自分の中でどうやってそれを解決するのか。コンプレックスというつらさを、どうやって扱えばいいのでしょうか。

床に座ってうつむいている女性
写真=iStock.com/xijian
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コンプレックスは心の中に置いておく

僕の場合、高校生のころまでは、四畳半と三畳間のアパートに、家族四人で暮らしていました。裕福ではないわが家でした。「うちは貧乏だなあ」と思う幼いころの気持ちは、まさにコンプレックスであり、悔しいこと、悲しいことでした。

しかし、このコンプレックスとどう向き合って生きていくのか。僕は思い悩んだ末、「心の中に置いておく」ことにしたのです。その事実というか現実はどうやったって変えることはできないからです。

心の中に置いておく。つまり、「わが家は貧しい」ということを受け入れるということ。ただ、単に受け入れたとしても、きっとまた、思い出して、悩むこともあるでしょう。「なんで僕は、こんな家に生まれてきたのだろう」と。そんなときがやってきたら、こう自分に聞きます。

「この先、八〇歳まで寿命があったとして、自分のコンプレックスをずっと嘆いて、しかも怒りを持ち、もしくは社会を恨みながら生きていくのか」と。

もちろん、そんな生き方はふしあわせでしかありません。ばかばかしくも思います。冷静になればわかるはずですよね。