“Z世代”と呼ばれている若者のあいだでは、時間的な効率を表す「タイパ(タイムパフォーマンス)」が重視されている。ニッセイ基礎研究所生活研究部研究員の廣瀬涼さんは「SNSでは、ある女性がディズニーランドで使ったカチューシャをすぐにメルカリに出品したことが話題になった。これはZ世代の瞬間的な消費を好むという特徴を体現している。消費者の興味は移り変わりやすく、同じモノやコトに留まるのは不可能になっている。」という――。
※本稿は、廣瀬凉『タイパの経済学』(幻冬舎)の一部を再編集したものです。
「オタ活」に覚える違和感
筆者の主たる研究テーマは「オタクの消費」である。
従来のコンテンツを熱心に消費する「オタク」と呼ばれる消費者を、その消費性に着目して定義するのならば、「自身の感情に『正』にも『負』にも大きな影響を与えるほどの依存性を見出した興味対象に対して、時間やお金を過度に消費し、精神的充足を目指す人」となる。オタクの消費の根底には自身の精神的充足があり、消費によって安寧感や満足感を追求するため依存性が生まれやすい。だからこそ、消費しても消費しても満足できず、好きなコンテンツに対する消費を繰り返し、没入していくのである。
一方、Z世代の言う「オタク」は趣味そのものを表す言葉として変化した。「自分が価値を感じたモノ・コトにお金と時間をかけること」を「オタ活」「推し活」と呼ぶことも一般的になり、日常的にも「週末はオタ活する予定」「オタ活するのが忙しい」と使われている。好きなモノやコトをする際の時間やお金の消費に対して、カジュアルに「オタ活」という言葉を使用しているともいえるかもしれない。しかし、筆者はオタ活が主に「する」という言葉と合わせた動詞として使われている点に違和感を覚える。
オタクが内在化したパーソナリティならば、当人は常にオタクの状態であるはずだ。また、何かが好きである状態がオタクならば、オタクという言葉は一種のマインド(精神)として個人のなかで一貫しているものと考えられる。すごく簡単に言えば、オタクはずっとオタクなのである。