自分らしく主体的に生きるための思想であり技術

彼女は著書にこう書いています(『「死への準備」日記』126~7ページ)。

私は大きな困難に出合ったら、まずその問題を分析して、どう対処するかを考える。問題に直面した直後の一時間くらいは、衝撃が大きすぎて何も考えられなかったこともあるが、そのあと、だれに相談したらいいかを考え、解決のために一歩踏み出す。最初に乳癌を発見したときも、ついこの間、右側にしこりを見つけたときもそうした。アメリカの保険会社に健康保険の申し込みを断られたときもそうしたし、何度か失職したときも同じようにした。
だから、いまのように病気が重くなり、治療の可能性が非常に低いという状況にあって、もし鬱状態に陥ったり、寂しさ、悲しさに襲われて仕事や日常生活がまともにできない、というようなことでもあれば、さっそく専門家の助けを借りるだろう。
だが、いまのところ、私は治療の激しい副作用に苦しみ、体力低下に悩みながらも、気が沈んでいる状態が何時間も続くことはない。寂しさとか悲しさとも無縁だ。私は、癌にかかったことをとくに不幸な事件だとは思っていない。私のこれまでの人生は、いくつかの困難があったにせよ、楽しい思い出に満ちている。

私は千葉さんの著作が大好きで、ほぼ全作揃えており、ときどき読み返しては、彼女の「問題解決法のスピリット」に毎回新鮮に感嘆し、そこから多くを学びます。千葉さんの著作は残念ながらほぼ品切れになっており、なかなか入手しづらいのですが、『昨日と違う今日を生きる』という著作だけは電子書籍で読めるので(2023年5月現在)、ぜひ皆さんにも読んでいただきたいと思います。

自分の人生の主人公は自分自身でしかありえません。問題解決法は、自分自身の人生を自分らしく主体的に生きるための思想であり、技術だと私は考えています。まあ、要するに問題解決法が大好きなんです。その魅力が皆様にも伝わったら嬉しいです。

伊藤 絵美(いとう・えみ)
公認心理師、臨床心理士、精神保健福祉士

洗足ストレスコーピング・サポートオフィス所長。慶應義塾大学文学部人間関係学科心理学専攻卒業。同大学大学院社会学研究科博士課程修了、博士(社会学)。専門は臨床心理学、ストレス心理学、認知行動療法、スキーマ療法。大学院在籍時より精神科クリニックにてカウンセラーとして勤務。その後、民間企業でのメンタルヘルスの仕事に従事し、2004年より認知行動療法に基づくカウンセリングを提供する専門機関を開設。主な著書に、『事例で学ぶ認知行動療法』(誠信書房)、『自分でできるスキーマ療法ワークブックBook1&Book2』(星和書店)、『ケアする人も楽になる 認知行動療法入門 BOOK1&BOOK2』『ケアする人も楽になる マインドフルネス&スキーマ療法 BOOK1&BOOK2』(いずれも医学書院)、『イラスト版 子どものストレスマネジメント』(合同出版)、『セルフケアの道具箱』(晶文社)、『コーピングのやさしい教科書』(金剛出版)などがある。