「自分が話す」よりも「相手に話させる」ことを意識

相手の答えを受け止めるだけだと、そこで会話が終わってしまうので、その都度、質問を追加していきます。そうすることで、会話のキャッチボールが自然に続きます。

対人緊張が強く、雑談に対して苦手意識がある人は、「自分が話さなくては」「相手を楽しませることを言わなくては」と思い込んでいる人が多いように思います。しかし実際はそうではなく、雑談のうまい人は、自分が話しているようで、実は相手にうまく話させています。その割合は、自分:相手=4:6、あるいは3:7ぐらいです。必ずしも「話し上手」になる必要はなく、「話させ上手」「聞き上手」になることを意識するとよいでしょう。

ただ、相手の答えを受け止めることなく、脈絡のない質問を続けていると、質問というよりも尋問になってしまうので注意が必要です。極端な例を出すと、「出身はどこですか?」と聞いて「○○県です」という答えを聞いたあとすぐに「好きな食べ物は何ですか」「何かスポーツをやっていますか」など、別の質問を重ねたりすると、聞かれた方は不快な印象を持ちます。特に緊張している時は、相手の話が耳に入らず、こうした尋問調になりやすいので気を付けましょう。

4 仲良くなったら相違点を話題にする

まだあまり打ち解けていない会社の上司や同僚、初対面の取引先などが相手の時は、仕事のことや天気の話題など、共通の話題で雑談をするのがいいでしょう。でも、会う回数が増えて距離感が近くなってきたら、共通点よりも、相違点を話題にすると話が盛り上がり、より相手との関係を深めることができます。

たとえば「週末に何していました?」と聞いて、相手が「キャンプに行ってきました」と答えたら、「私はインドア派なので、キャンプは行ったことがないんです。キャンプのどんなところが面白いですか?」と返してみるのです。

お互いの違いを見つけ、「なぜ違うのか」を深めることで、お互い、相手のことをより深く知ることができます。

仕事の話ばかりだと、ビジネスライクになりすぎて、建前ばかりで本音を話すことができるようになりません。腹の探り合いになり、緊張関係が続いてしまいます。雑談をはさむことで、一気に人間関係がスムーズになることは多いので、ぜひこれら1から4を試してみてください。

構成=池田純子

井上 智介(いのうえ・ともすけ)
産業医・精神科医

産業医・精神科医・健診医として活動中。産業医としては毎月30社以上を訪問し、精神科医としては外来でうつ病をはじめとする精神疾患の治療にあたっている。ブログやTwitterでも積極的に情報発信している。「プレジデントオンライン」で連載中。