「ダメージコントロール」でパフォーマンスの低下を防ぐ
子育て戦場で、どのようにして「ママがうつになる」事態を避けていくか。
あなたの心の中の「クールな指揮官」には、「ダメージコントロール」という自衛隊式思考を、ぜひ身につけてもらいましょう。
「ダメージコントロール」とは、ダメージを受けたときに、被害を最小限にするためにどうするか、あらかじめ行動を考えておくというものです。
たとえば隊員たちが戦場におもむくとき、本人たちは当然、行く先が楽園だとは思っていません。
けれども、心のどこかで漠然と、
「これくらいは、まあ自分にもできるはず……」
という、うっすらとした期待感(楽観)を、だれしもが持っているものです。
ところが実際の戦場では、手持ちの弾薬がなくなったり、予想以上に寒い冬が来たり、さまざまな想定外のことが起きてくる。パフォーマンスが上がらなくなる事態に見舞われます。そういうときに、なまじ期待感を持ってしまっていたために、「もうダメだ!」と、何もかも投げ出してしまう人が出てくるんです。こうなると戦いには負けてしまいます。
そこで、パフォーマンスの低下を防ぐために、組織では「ダメージコントロール」という戦略を持つのです。
「プランA」「プランB」「プランX」を準備しておく
「ダメージコントロール」をイメージするにあたって、「階段」を思い浮かべてみてください。自衛隊では、よく「ラダー」と言います。
通常より状況が悪くなったら「プランA」。
さらに状況が悪化したら「プランB」。
危機的状況に陥ったら「プランX」。
このように階段状のイメージで「対策行動」を決めておきます。
こうしておくと、なんらかの要因で調子が落ちても、「1段ラダーが落ちた」と考え、次の行動プランにスムーズに移行できます。
パフォーマンスが少し落ちただけで、すっかり悲観してしまい、「もう何もかもおしまいだ!」などと、すべてを投げ出してしまうという事態を防げるんです。
MR(メンタル・レスキュー)協会理事長、同シニアインストラクター。1959年、鹿児島県生まれ。防衛大学卒業後、陸上自衛隊入隊。1996年より陸上自衛隊初の心理教官として多くのカウンセリングを手がける。自衛隊の衛生隊員(医師、看護師、救急救命士等)やレンジャー隊員等に、メンタルケア、自殺予防、コンバットストレス(惨事ストレス)コントロールについての指導、教育を行なう。2015年に退官し、現在は講演や研修、著作活動を通して独自のカウンセリング技術の普及に努めている。著書に『寛容力のコツ』(三笠書房《知的生きかた文庫》)、『自衛隊メンタル教官が教える 心の疲れをとる技術』(朝日新書)、『「気にしすぎて疲れる」がなくなる本』(清流出版)など多数。