思春期前に進路を決めると、子供本人も迷いがなくなる

逆にドイツだと、10歳でハウプトシューレ(またはミッテルシューレ。将来は職人になる。または大学進学が必要ではない職業に就く)を選ぶと、将来大学へ行ったり、大学を出ていないと就けない職業に就くという夢は見なくなります。早い段階での「あきらめ」がそこにはあります。

「あきらめ」と言うと、どうも響きが悪いのですけど、10歳で一つの道へ突き進んでいくやり方は、見方によっては潔いとも言えるわけです。本人はまだ思春期に達しておらず、その段階で将来への(職業的な)準備がスタートする、ということを考えると「迷いがない」状態の「良い意味でのあきらめ」はある意味合理的です。

ドイツでは10歳の子であっても、周囲の大人(先生や親)がその子の才能や資質というものをシビアに見ていて、それに沿った将来設計をします。そこが、子供に関しては、あくまでも「努力」を重視し、「才能」という言葉を使うことに慎重な日本との大きな違いだと思います。

少年少女
(左)写真=iStock.com/romrodinka、(右)写真=iStock.com/ThomasVogel
※写真はイメージです

日本は小学校での成績が悪くても大学進学を考えられる

日本でドイツのシステムを説明すると「え、10歳で……? 早くないですか?」と言われることが多いです。日本には確かに「受験」という難場がありますが、小学校の受験に失敗したら中学校の受験に期待し、その後は高校の受験に期待して、大学受験に期待できる……という「長いあいだ夢が見られる」システムでもあるのです。ただもしかしたら私は受験を経験していないので、このようなのんきなことが言えるのかもしれませんが……。

ドイツだと、「同じ13歳」でも「将来の大学に向けて勉学に励んでいる子」と「早い自立を目指し、早く職業を身につけることを目標としている子」が同じ教室で机を並べて学ぶことはなく、既に「違う種類の学校」で学んでいるというわけです。

ドイツの社会を見てみると……ドイツの大人は、自分の可能性について、日本人と比べ非常に現実的という印象を受けます。そうはいっても、ドイツでも最近は決断を先延ばしにするのも悪くないと考える人も増えてきていて、Gesamtschule(ゲザムトシューレ。総合学校)に子供を通わせ、少し遅めに進路を決めることも珍しくなくなりました。