あなたに「つながり」を感じているから打ち明けている
また、自殺を引き起こす最も大きな問題は孤独やつながりの欠如です。常識的に考えても、我々の人生の大半を支え豊かにしてくれるのは対人支援の専門職の人間ではなく、家族や友人といった周囲で共に生きる人々です。「死にたい」などという気持ちは人生における重大な秘密であり、仮にそれを周囲の人に打ち明けることがあるとすれば、誰でもいいから言ってみたということはほぼありえません。
打ち明けた側は意を決して、その人だからこそ打ち明けたのであり、そこに特別なつながりを感じている可能性はかなり高いと思われます。だからこそ、可能であれば、死にたい気持ちを打ち明けられたその人が、何が最善か分からなかったとしても頑張って対応することが、周囲とのつながりの回復につながる可能性が一番高いですし、それが結果としては自殺を予防するということへの最短ルートになっている可能性も高いわけです。
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1983年生まれ。東京大学大学院教育学研究科臨床心理学コース博士課程修了。博士(教育学)、公認心理師、臨床心理士。主な著書に『インターネットは自殺を防げるか――ウェブコミュニティの臨床心理学とその実践』(東京大学出版会、第31回電気通信普及財団賞受賞)、『自殺学入門――幸せな生と死とは何か』(金剛出版)、『公認心理師をめざす人のための臨床心理学入門』(大修館書店)など。