笑顔で対応したがマスクで見えず「生意気な女だ」と激怒
③コミュニケーションのトラブル
マスク着用、アクリル板設置といった接客スタイルの変化に伴い、コミュニケーションのトラブルになったケース。
・マスクを着用してアクリル板越しの接客になるため、お互いに声が聞き取りづらい状態だった。何度か同じやりとりをしていると、突然大きな声で暴言を吐かれた。
・笑顔で対応していたがマスクで見えなかったからか、「生意気な女だからレジから出てこい」とお客様に言われた。言われたとおりにすると、今度はおでこにデコピンをしようとしたので「よけるなら名前を教えろ!」などと怒鳴られた。
・マスクの在庫がないことをお客様に説明していたら「お前がつけてるマスクをよこせ」と言われた。気持ち悪く怖いなと感じた。
2020年に日本最大の労働組合であるUAゼンセン(全国繊維化学食品流通サービス一般労働組合同盟)が約2万7000人の労働者を対象におこなった調査によれば(図表1)、回答者の半数以上がコロナ禍の期間を含む2019〜2020年の2年間でカスハラが「あった」と答えている。コロナに関連するものは回答者全体の2割が経験していた。カスハラ被害に遭った5人に1人はコロナ関連のカスハラを受けた計算になる。
コロナ関連のカスハラは、業種ごとにも差が出ている。先ほどの実例でも度々出ていたように、ドラッグストア関連の業種では約67%がカスハラが「あった」と回答している。次いで、「あった」の割合が多い業種は、スーパーマーケットで43%、総合スーパー41%、ホテル・レジャーで35.8%となっている。いずれも、コロナ禍でも営業を続けていた業種だ。
※参考資料
・桐生正幸 2020「悪質クレーム対策(迷惑行為)アンケート調査 分析結果:迷惑行為被害によるストレス対処及び悪質クレーム行為の明確化について」
山形県生まれ。東洋大学社会学部長、社会心理学科教授。日本犯罪心理学会常任理事。日本心理学会代議員。文教大学人間科学部人間科学科心理学専修。博士(学術)。山形県警察の科学捜査研究所で主任研究官として犯罪者プロファイリングに携わる。その後、関西国際大学教授、同大防犯・防災研究所長を経て、現職。著書に『悪いヤツらは何を考えているのか ゼロからわかる犯罪心理学入門』(SBビジュアル新書)など。