ケース8、離島で暮らし進学先の選択肢が少ないスズ
スズは、ミホのオンラインゲームでの友達です。年はミホより一つ上で中学3年生です。
スズたちのやっているオンラインゲームは3人1組でチームを組んで、限られた場所と制限時間で、生き残りサバイバルをするものです。チームメイトは通常、自動割り当てされますが、「フレンド」とチームを組むほうが有利にプレイできます。
スズはゲームをいっしょにするフレンドを探すのにとても苦労しました。スズの住んでいるところは都会から遠く離れた島なのです。東京から転校してきた下級生がたまたまスズと同じゲームをしていることが分かり、その子とフレンドになりました。その下級生の東京時代の友達がミホだったのです。
ゲームやショッピングの悩みは、さほど深刻なものではないかもしれません。スズの悩みは高校への進学です。今通っている中学校は通学が不便で、帰りが遅くなるときなどは暗い道には街灯もほとんどなく、怖い思いをして家路についています。島内には普通科の高校は1校だけで、もしその高校に行くことになったら今よりもさらに通学が不便になります。
都会で暮らしたいがシングルマザーの母を置いていけない
とはいえ、親戚の家に下宿させてもらうとか全寮制の学校を選びでもしないかぎり、島外の高校に進学するのは不可能なのです。この島に住んでいる子どもたちの進路選択肢はかなり狭いと言わざるを得ません。
スズのささやかな夢は、大人になったら都会で暮らすことです。朝起きたら通勤電車に乗ってオフィス街に向かい、職場の近くのカフェで朝食をとり、おしゃれなお店でランチを食ベて、仕事帰りは同僚とバーでお酒を飲む。休日はショッピングモールや百貨店で買い物をする……そんな生活に憧れるのです。
でも、スズのお母さんはシングルマザーです。一人でスズを育ててくれている母親を島に残して、自分だけ都会に行くことはできないだろうな、と思っています。