Q 上司の勤務態度が悪くてモチベーションが上がりません。自分はいつも遅れて出社しておきながら、退社時間ギリギリになって私に仕事を申しつけてきます。このだらしない上司とどのようにつきあうべきなのか、悩んでいます(イベント事業、女性、41歳、入社5年)


A 当たっているかどうかわかりませんが、この相談の短い文面から感じたことを言います。上司の勤怠の状態が悪いためモチベーションが上がらないということですが、おそらく問題の本質はそこではなく、上司の人間性にあるのではないでしょうか。

なぜならもし上司の長所を認めていれば、「遅刻ばかりしている」という欠点も愛嬌に見えるものだから。ダメなところはあるものの、それを上回る何かがあってみんなに慕われている上司なら、多少遅刻しようが二日酔い気味だろうが、「もう、しょうがないなあ」と笑って済まされるものです。ところがこの上司はそうではない。ということは、人間の器が小さいのかもしれません。

上司の能力を3つの要素に分けて考えてみましょう。

1つは“have”。どのような知識や技術などを有しているかということ。

2つめは“do”。日ごろの行動、行いです。

3つめが“be”。これはその人のあり方を指しています。人の器と言われる部分です。

以上の3つで人は人を判断する。そして悲しいかな、いくら“have”と“do”が優れていても、"be”がNGだと、何もかも否定したくなるのが部下の心情というものです。

たとえば、同じ人から同じような注意を受けても、Aさんの話だったら素直に聞けるのに、Bさんから言われると腹が立つということはありませんか。

部下から上司を見る目が、同僚や部下を見る目より常に厳しくなるのは、自分の上に立つ人への期待感の裏返しに他なりません。

ですから、上司の立場になると、have(知っている、持っている)やdo(やっている)で優れていても当然と思われることが多く、be(あり方)で人物評価されてしまう傾向があるのです。

きっとあなたの上司も“be”が低いのでしょう。だから部下が粗探しをしたくなり、たかが勤怠くらいのことで突き上げられることになる。

モチベーションの話をしましょう。部下が上司を見ていて感じるモチベーションの源は、「あこがれ」、か「怒り」のどちらか、又はその両方です。

「あの人のようになりたい」というあこがれ。これは長期的なパワーを生みます。もしくは「こんな人が上司だなんて冗談じゃない」という怒り。この許せない言動を上手く利用することで、短期的なパワーになります。

あこがれの上司がいればラッキーですが、いない場合がほとんどでしょう。その場合は、外部にあこがれを求めれば(部分的にでも充分です)いくらでも対象はみつかるものですし、あこがれようがない上司への怒りでも自らのパワーに変えていくことが大切です。どんな環境でもプラスにするという発想とは、こういうことを言うのです。

怒りをプラスに変えるコツは、「今に見てろよ」という意気込みを持つことです。たとえば、腹が立ったメールは二度と見たくないのが心情ですが、そこをあえて印刷して、奮起したい時に目にするのです。

よくも悪くも、上司と部下の上下関係は長くは続かないものです。ほとんどの企業では人事異動があるからです。でも上司が代わるたびにモチベーションを左右されていたらどうなるでしょう。いい上司ならやる気になって、イヤな上司ならやる気を失うとしたら、それは完全に他人依存の人生ということになってしまいます。それではあまりにももったいない。

それより怒りをコントロールして、モチベーションに昇華させる技術を身につけてほしいと思います。それができるようにしておけば、たとえこの先どんなことがあろうと精神的に折れることはありません。

「退社時間ギリギリに仕事を言いつけてくる」という問題に対する具体的な対策としては、仕事の納期を確認することでしょう。上司も意地悪でそうしているわけではないと思います。

退社間際に命じられたことでも、締め切りがまだ先なら、今日は帰って明日の朝着手すればいい。そうではなくて、「どうしても今日中にやってほしい」ということが続くなら、それは常に緊急事態ということですから、組織として根本的に何かが間違っています。そちらの原因を上司と協議してみてください。

上司命令に逆らうみたいで気が引けるかもしれませんが、なにも仕事を拒否するわけではなく、ただの業務改善です。この確認・相談を繰り返すうちに、あなたの仕事の質があがれば御の字ではありませんか。試してみてください。

※本連載は書籍『プロフェッショナルサラリーマン 実践Q&A』に掲載されています(一部除く)

(撮影=尾関裕士)