キャパを見極めブレーキをかける

上司としては、もちろん部下のメンタルヘルス不調の兆候に気付くことも大切ですが、そもそも不調に陥らないよう配慮したいところです。予防のために大切なことは、部下の「キャパ(キャパシティー)」を見極め、ブレーキをかけることです。

キャパは人によって違うので、その見極めが難しいところです。ただ、特に責任感が強く真面目で几帳面な人、やる気満々の頑張り屋タイプの人は、自分で仕事を抱え込みやすく、キャパオーバーになりやすい傾向があります。特にこの時期は、4月にエンジンがかかりすぎて、キャパを超えやすいのです。「本人がやる気だから」とそのままにせず、「今はいいかもしれないけれど、これではいずれ息切れしてしまう。あまり根を詰めず、休みながら取り組もう」と、上司がブレーキをかける必要があるでしょう。

変化に気が付くためには、普段から部下の様子を知り、コミュニケーションを取っておく必要があります。あいさつや雑談、仕事のフィードバックなどでまめにコミュニケーションを取ることで、部下の方も悩み事や不調があったときに相談をしやすくなります。いつもあまりコミュニケーションを取らない上司に、いきなり「調子が悪いんじゃないの」と言われても、なかなか正直に話せません。

上司も自分の不調に注意する

ここまで、部下のメンタルヘルス不調への上司の対応についてお話ししてきましたが、この時期は特に、上司自身の不調にも気を付けてほしいと思います。

新年度は、新しく迎えた部下のマネジメントも始まり、仕事量も増えます。上司だからといって、完璧な人間はいません。部下がいると弱音を吐けないという人は多いですが、産業医でもいいですし、家族や友人、知人など、時々弱音を吐いたり愚痴を言ったりできる相手を持っておいてほしいと思います。そして不調を感じたら、早めに精神科を頼ってください。

構成=池田純子

井上 智介(いのうえ・ともすけ)
産業医・精神科医

産業医・精神科医・健診医として活動中。産業医としては毎月30社以上を訪問し、精神科医としては外来でうつ病をはじめとする精神疾患の治療にあたっている。ブログやTwitterでも積極的に情報発信している。「プレジデントオンライン」で連載中。