嫌いな人を好きになる必要はない
どうしても肌が合わないとか、相性が悪いという人はいるものです。
それはもうどうしようもないことです。人間なら、どうしても嫌いな人がいることは避けられません。
でも、本質的にどうしようもないにもかかわらず、善良な人ほど、そういう自分を許せない傾向があるようです。
そのため、好きになる努力をするわけですが、どうしても嫌悪感を消すことができず、そのことでまた心がモヤモヤとしてしまうのです。
いっそ、嫌いな人のことまで、好きになろうとするのはやめましょうよ。
どうせ好きになどなれないのですから。
どんなに好きになろうとしても受けつけない人はいる
米国ケンタッキー州にあるルイビル大学のマイケル・カニンガムは、「社会的アレルゲン」という用語を作りました。「社会的」とは、「人付き合いの」くらいの意味で、「アレルゲン」は、「アレルギーを引き起こすもの」という意味です。つまり、「社会的アレルゲン」とは、「人間関係のアレルギー」のことを指します。
カニンガムによると、私たちは、ある特定の人に対しては、小麦や花粉などと同じようなアレルギーを持ってしまうそうです。
「くちゃくちゃと音を立てて食べるのがイヤ」
「どうしても体臭だけが許せない」
「貧乏ゆすりをする人が嫌い」
このように、私たちはある人の行動やしぐさ、あるいは表情やクセといったものに対して嫌悪感を抱きます。最初は何とか許せても、それが何度もひんぱんにくり返されると、私たちはアレルギーを持つようになります。
そして、いったんアレルギー反応が形成されてしまうと、もうどうにもなりません。
小麦アレルギーの人に向かって、「小麦はものすごく栄養があるんだから、食べなきゃダメだよ」とは言いませんよね。小麦アレルギーの人は、どんなに好きになろうとしても、身体が受けつけないことを知っているからです。
社会的アレルゲンも同じなのです。
嫌いな人が近くにいるだけで、過呼吸になって息ができなくなってしまったり、言葉が話せなくなってしまったり、身体が震えてしまうこともあります。
もしそうなってしまったら、もう運命だなと割り切って、できるだけその人のそばには近づかないようにするのが一番です。
慶應義塾大学社会学研究科博士課程修了。立正大学客員教授。有限会社アンギルド代表。社会心理学の知見をベースに、心理学の応用に力を注ぎ、ビジネスを中心とした実践的なアドバイスに定評がある。『心理学BEST100』(総合法令出版)、『人も自分も操れる!暗示大全』(すばる舎)、『気にしない習慣』(明日香出版社)、『人に好かれる最強の心理学』(青春出版社)など、著書多数。