※本稿は、猪熊律子『塀の中のおばあさん』(角川新書)の一部を再編集したものです。
70代で入所5度目の女性が語ったこと
ここにきて、5年近くが経ちます。覚醒剤の営利目的使用の罪で入りました。刑務所は5度目です。恥ずかしいです。いずれも覚醒剤ばっかりです。
覚醒剤と関わるようになったのは、密売人と知り合って、一緒になったからです。それで徐々に深入りするようになって、見よう見まねで自分も売りさばくようになりました。籍は入ってなかったですけど、30年ほども一緒におったもんで。でも、縁を切らんことには絶対、この道から足は抜けられへんと、今回初めて、この年になって気づきました。
生まれは関西です。中学校を卒業して、家の仕事を手伝ったりして働きました。20代の頃、ある人と一緒になって子供もできたんですが、これが働かん男で苦労して。うちの親などにも迷惑かけて、これではあかんと思って別れました。
子連れで結婚した相手に殴る蹴るのDVを受けた
そのうち、子供ごと面倒見てくれるという人に出会い、一緒になったんです。最初の人とは籍を入れてなかったんですが、今度は籍を入れて。その人とは15年ぐらい一緒にいてました。でも、酒癖も女癖も悪くて、またすごく苦労して。酒飲んだらすぐ殴る、蹴るでね。生傷が絶えなかったんです。
私、子供を連れていったから、連れ子ですわね。それを承知で一緒になったのに、連れ子め、といわれた。この言葉には泣きました。別に隠して一緒になったわけじゃあるまいし、知り尽くして一緒になったのに、なぜこんなこといわれなあかんのかなと思って。我慢しよう、我慢しようと暮らしてきましたが、あまりに生傷が絶えないのをみて、身内が間に入ってくれたんです。それで別れることができました。