塀の中では刑務作業をしてまじめに暮らしている
ここでの生活ですか? 今は、刑務作業で、一つの班の班長をさせてもろてます。紙にひもを通す作業があるんやけど、年いった人の中には、ひもの数を勘定できん人もいます。間違ったら外から刑務所にくる仕事がもらえんようになるから必死です。納期も過ぎたらいかんから毎日が必死。でも、仕事が好きだから苦になりません。
私、仕事は好きなんです。どんな仕事でも。悪い仕事も好きやったからだめやったんだけど。機械いじるのも好きやし、得意です。体を動かすこと自体が好きなんです。健康やからね。ここにきても、風邪をひいたり、寝込んだり、薬を飲んだりしたことはないです。ここはお年寄りが多いから薬を飲む人が多いけど、私は全然飲みません、薬は。
最初は相部屋だったけど、今は一人部屋。気楽でいいです。刑務所はいろんなルールがあって自由にならへんけど、決まりさえ守っていたら、慣れたらどうということないです。私、自分でいうのもなんやけど、根はまじめで反則は嫌いやから。
家族がいない老人は刑務所が恋しくなってしまう
ここでの一番の楽しみは食べ物です。行いが良いと、月一度、外の食事も食べられます。メニューがあって、カレーとか、焼き肉とか、中華とか、そこから選べます。月に2回、お菓子も出ます。この年になっても、食べるのが一番の楽しみですよ。
ここにおると二度、同じ顔を見る人もいます。年いってきたら、外の生活は寂しいんやと思いますわ。誰も相手にしてもらえん。家族がおらん人は、ここが恋しうなると違うかなと思います。こっちきたら同じような仲間がおるし、楽しいし、わいわいいうて話し合いもできるし。表だったらそんな話もできないもん。表やったらほんまに独りぼっちでしょ。だから戻ってくる人が多いんじゃないかと思います。
年のいった人は万引きが多いですわ。年いってて満期で帰る人も多い。引き受ける家族がいてないということだと思います。もう必要とされてないんやと思います。寂しいから、こっち来てたほうが気が晴れる。ふっと思い出して、パン1個わざと盗って来る人もいてると思いますよ。経済的なもんもあると思います。やっぱりお金出すのいやなんでしょうね。あの味を覚えたらお金出すのはいややと思いますよ。