アメリカの勝算は低い

実際のところ、米中の関係は年々悪化している。ワシントンは何度も中国に対して侮辱的な態度を取ってきた。

ジム・ロジャーズ『捨てられる日本 世界3大投資家が見通す戦慄の未来』(SB新書)
ジム・ロジャーズ『捨てられる日本 世界3大投資家が見通す戦慄の未来』(SB新書)

台湾をめぐって米中戦争が勃発した場合、おおかたの予想通りアメリカの勝算は低いだろう。地図を見れば中国の優位性が一目瞭然だ。本土から遠く離れたアジアでは、アメリカが対中国の戦争に勝つことは難しい。しかしそれでもアメリカは戦争をしたがるだろう。

アメリカは、1776年に独立してからというもの、今まで一時期を除いて常に戦争に参加していた。戦争というのは第二次世界大戦のような世界規模のものばかりとは限らない。かつてはアメリカ先住民と頻繁に戦っていたし、第二次世界大戦以降も朝鮮戦争やベトナム戦争、湾岸戦争やアフガニスタン紛争のほか、中東やアフリカでの紛争に頻繁に兵士を送り込んでいる。むしろアメリカは、戦争することを好んでいるようにすら感じられる。

密やかに外交を続ける日本

アメリカは中国のみならず、ロシアに対しても非常に厳しい態度をとっているが、日本はロシアや中国とも密やかに外交を続けている。たとえば、サハリン2などの事業も継続させており、多くの日本企業はロシアにとどまっている。誤解を恐れずにいえば、私はロシアや中国と外交関係を続けている日本を称賛する。

なぜなら、どのような状況にあっても――たとえ、それが罵り合いであっても――対話を続けていればお互いの意見を伝え合うことができる。両者の間で全く会話がなければ、問題は悪化していく一方だ。

ジム・ロジャーズ(Jim Rogers)
投資家

ロジャーズホールディングス会長。1942年、米国生まれ。イェール大学で歴史学、オックスフォード大学で哲学を修めた後、ウォール街で働く。73年にクォンタム・ファンドを設立し、ヘッジファンドという手法にて莫大な資金を運用して財を成した。ウォーレン・バフェット、ジョージ・ソロスと並び世界三大投資家と称される。『大転換の時代』(プレジデント社)、『世界大異変』(東洋経済新報社)など著書多数。