これからの世界経済はどうなっていくのか。世界的投資家の1人、ジム・ロジャーズ氏は「おそらく長期間にわたるブル相場で株価が上昇しすぎたことが要因となり、5年以内に『私の人生で最大のベア相場』が到来するだろう」という――。

※本稿は、ジム・ロジャーズ『捨てられる日本 世界3大投資家が見通す戦慄の未来』(SB新書)の一部を再編集したものです。

危機的な下落を示すチャート
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人生最大の下落相場が5年以内にくる

中国がアメリカから覇権国の座を奪うタイミングはいつになるだろうか。

私は、将来的に起こるであろう「わが人生最大のベア相場(資産価格が下落する金融市場のトレンド)」がそのタイミングだと予測している。ベア相場でアメリカ経済が崩壊する様を見て、世界は中国が覇権国になった確証を得るだろう。

私自身、投資家として「ブル相場(資産価格が上昇する金融市場のトレンド)」ではなく、「ベア相場」を追いかけ、そのなかで将来性が感じられるものを買うことをいつも心がけてきた。おそらく5年以内に到来するだろう。

ベア相場は歴史上、何度も起こってきた。これからも必ず起こる。

戦争、疫病、金融引き締め政策、大企業の破綻などがきっかけになることもあるが、基本的には価格が上昇しすぎて、それ以上上がらなくなったタイミングで起こるものだ。将来的に起こる「私の人生で最大のベア相場」は、おそらく長期間にわたるブル相場で株価が上昇しすぎたことが要因となるだろう。

今、世界中の株式市場において、一部ではバブルも発生している。そうしたなか、記録的なインフレを抑制すべく、中央銀行が金融引き締めに動いている。そういう状況では金利が上昇し、ベア相場を誘発しやすい。ベア相場に入ると、景気が後退するリスクが高まる。次のベア相場では、中国の下落がアメリカより遥かに浅くなるだろうと私は見ている。

米中戦争は起きるのか

ベア市場以外に、中国がアメリカにとって代わる可能性があるのは、米中戦争だ。

アメリカは世界最強の軍隊を有しているので、戦争には勝つかもしれない。しかし、仮にアメリカが勝利をおさめたとしても、その後の繁栄が約束されるわけではない。

前述したように、イギリスも第二次世界大戦で戦勝国になった後に衰退した。アメリカも、こうした危機感を感じているからこそ必死だ。

しばしばアメリカのGAFAとも比較されがちな中国の巨大テック企業、アリババ、ファーウェイ、テンセントなどを輩出してきた中国に対して、アメリカはしばしば政治的手段を講じて市場から追い出そうとしてきた。

たとえば、Appleはアメリカ政府に「ファーウェイはスパイだ」と言って、市場から追い出そうとした。しかし中国に対して、決定的な打撃は与えられていない。