養育者が変わっていくことは過酷な体験
ライフストーリーワークは、子どもの生い立ちの整理を大人と一緒にするワークです。私たちは親子への支援の中で、同じように「人生の軌跡」であるバイオグラフィーの視点も大事にしています。「これまでの子どもや親の人生に思いを馳せる」というイメージです。
どのようなバイオグラフィーにも、影の部分とともに、光の瞬間があります。さまざまな理由で実親と離れて暮らす子どもたちは、養育者が変わっていくという現実にさらされています。
乳児院から児童養護施設、里親さんへ。こんなふうに養育者が変わっていくことは、子どもにとっては過酷なことでしょう。しかし、過酷さの中にあっても自分にまなざしを向けてくれていた大切な代替養育者の存在があったことは、子どもたちにもっと伝えていく必要があると思います。
子どもに寄り添う里親などの存在が宝に
子どもたちの代替養育者である施設職員さんや里親さんから、初めて出会った時の子どもたちの様子を伺う機会がよくあります。暴れてそっぽを向いて手を払いのけたAちゃん、表情がなくお人形のようだったBちゃん。その子どもたちとつながるために、子どもを観て、葛藤し、あきらめないで寄り添い続けてくれた大人の存在があります。
乳児院でBちゃんの担当だった先生は、面会に来なくなった実母に対して、「あの母親は子どものことなんてどうでもいいと思っているのではないか」とあきらめかけていました。しかし、「○○な子になってほしいと思ってこの名前をつけた」「母子手帳にたくさん書き込みがあった」と過去に会った時の実母の言葉や行動を思い出し、「母親が会いに来れないのは、どんな事情があるのだろう」と実母にも心を寄せていくようになりました。
そして、実母の「○○な子になってほしい」という言葉が、子どもの人生にとって大切なリソース(宝)であることに気づき、Bちゃんの人生のためにそれを記録として残そうとされていました。
社会的養護下にある子どもにとって、自分の存在に心から関心を向けてくれる大人の存在は、大切なリソース(宝)なのです。