子どもの安心をもたらす「アタッチメント」

ある研修を行っていた時、参加されていた施設の先生がこう語っていました。

「一年に一度、支援の目標を書いて提出する際、毎年ワンパターンで“子どもとの愛着関係を築く”と書いていました。でも、愛着関係って実はよくわかっていなかった。でも『アタッチメント』という言葉を理解してからは、まず『この子にとって安心することはなんだろう』と考えるようになった。子どもをきちんと観ることがこんなに大事だったなんて」。

アタッチメントは「子どもから見える世界」を理解する時に役立ちます。

アタッチメントという言葉は、子育て支援の現場で日常的に使われるようになってきていますが、実はこれだけ広まっても、まだ人によってとらえ方は違います。日本語で「愛着」と訳されていることから、親子の親密な関係、愛情というイメージで理解されている場合も多いようです。

私は15年前に親子支援を始めると同時に、アタッチメントの研究者の先生方から、アタッチメントの原義は「くっつくこと」だと学びました。このアタッチメントの本当の意味を、子どもを養育する親、代替養育者、保育士、教員、支援者の皆が知ることが、子どもの幸せにつながると確信しています。

不安や恐れがある時に特定の人にくっつく

アタッチメントとは、一言で言うと次のような意味になります。

「不安や恐れがある時に特定の人にくっついて安心感を得る」

危機的な状況の時、くっついて安心感を得られる大切な人がいるかどうかは、子どものその後の人生に大きく影響します。この、特定のくっつくことができる人のことを「主要なアタッチメント対象」といいます。血縁があるかどうかは関係ありません。「くっつく」ことは物理的だけではなく、心理的に「くっつく」ことも意味します

子どもの手に優しく触れる母親
写真=iStock.com/fizkes
※写真はイメージです

アタッチメント対象は、以下の二つの役割を持っています。

・安全な避難所:危険なサインに遭遇した時に逃げ帰るところ
・安心の基地:感情が落ち着くところ、そこから探索に出かけるところ

すなわちこれが、養育者の役割になります。何かあった時に「確実につながることができる」ということが、子どもの存在そのものを肯定していくことになります。そしてそれは、その後の長い人生を生きていく中で、大人との関係を結ぶための土台になるのです。