既存顧客のロイヤルティを上げる取り組み

近年、その成功例とされる企業に、カード会社のアメリカン・エキスプレス・インターナショナルや、プロ野球・ヤクルト球団などがあります。

前者は、ある調査によって「カード紛失時の対応」が、既存顧客への“信頼”に大きく影響していることを解明。そこで紛失時、速やかにカードを再発行できるシステムを導入することで、顧客ロイヤルティを高めました。

後者は、既存顧客のチケット購入データを分析し、新たなチケット販売システム(「スワチケ」)を構築。その結果、チームに“愛着”を抱くファンクラブ会員への先行販売などが可能となり、評判が上がり、新規会員の募集への反応もよくなったといいます。

先の「1:5の法則」やこうした顧客ロイヤルティが示すとおり、新規顧客をゼロから取りに行くより、既存顧客の“愛着と信頼”を守るほうが、はるかに効率がいい。

ムーヴ キャンバスも、既存顧客がこのクルマに抱く「かわいらしい」や“愛着”を守ったからこそ、彼女たちの口コミや後押しを呼ぶことに成功したのではないでしょうか。

牛窪 恵(うしくぼ・めぐみ)
マーケティングライター、世代・トレンド評論家、インフィニティ代表

立教大学大学院(MBA)客員教授。同志社大学・ビッグデータ解析研究会メンバー。内閣府・経済財政諮問会議 政策コメンテーター。著書に『男が知らない「おひとりさま」マーケット』『独身王子に聞け!』(ともに日本経済新聞出版社)、『草食系男子「お嬢マン」が日本を変える』(講談社)、『恋愛しない若者たち』(ディスカヴァー21)ほか多数。これらを機に数々の流行語を広める。NHK総合『サタデーウオッチ9』ほか、テレビ番組のコメンテーターとしても活躍中。