まさか自分が不調に陥るとは

――現在の体調はいかがですか。

一番悪い時期は脱しましたが、今も定期的に通院し、薬を飲んでいます。

こんな経験はもうしたくありませんが、単に「ひどい経験だった」で終わらせたくはありません。何か少しでも、学びになる経験だったと思えるよう、とらえ方を変えたいと思っていますし、今ようやく、そんなことを考えられる段階に入ってきた感じです。

振り返ってみると、まさか自分がメンタルヘルスの不調に陥るとは想像もしていませんでしたが、やはりあらためて、誰がなってもおかしくないと思いました。

人間関係に限らず、誰でもなんらかのストレスを受けることはあります。ですから、急に大きなストレスがかかったときに、ポキッと折れてしまわないよう、普段から心身のコンディションを整えておかなくてはならないと痛感しました。

今は、ずっと100%の力で走り続けるのではなく、手を抜くべきところは抜く、休むべきときは休む、など、生き急がないように自分への負荷を減らすことを考えるようになりました。

一人で抱え込まずSOSを

――改めて、メンタル不調に陥った人に伝えたいことは?

不調を感じたら、一人で抱え込まず、早めにSOSを出してほしいです。

私の場合は、もちろん薬の効果もありましたが、薬だけでは解決していなかったと思います。病院に行くことで、主治医の先生に心のつらさの話をして一人で抱えなくてもよくなったことが本当に大きかったです。

病院に行くことは、SOSを出すことの第一歩になりやすい。精神科医の受診でも、カウンセリングでもいいので、早めに専門家とつながってほしいと思います。

構成=池田純子

井上 智介(いのうえ・ともすけ)
産業医・精神科医

産業医・精神科医・健診医として活動中。産業医としては毎月30社以上を訪問し、精神科医としては外来でうつ病をはじめとする精神疾患の治療にあたっている。ブログやTwitterでも積極的に情報発信している。「プレジデントオンライン」で連載中。